「国からお金がもらえる制度があるらしいけれど、うちのような中小企業でも申請できるのかな?」 「助成金と補助金は名前が似ているけれど、何が違うのだろう?」
経営者や人事担当者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、助成金と補助金は、どちらも企業を支援する制度ですが、その目的や仕組みは大きく異なります。これらを同じものだと考えたまま申請を進めると、「準備不足で申請できなかった」「時間をかけて申請したものの採択されなかった」といった事態につながる可能性があります。
一方で、それぞれの特徴や仕組みを正しく理解し、自社の目的に合った制度を選ぶことができれば、事業運営や人材確保に役立つ心強い支援策となるでしょう。
そこで今回は、助成金と補助金の「決定的な3つの違い」をはじめ、自社に合った制度の選び方や、申請前に知っておきたい注意点について分かりやすく解説します。
助成金と補助金の「決定的な3つの違い」
助成金と補助金は、どちらも国や自治体から支給される返済不要の支援制度です。しかし、制度の目的や申請方法、受給の仕組みには大きな違いがあります。
違いを理解せずに制度を選んでしまうと、自社に合わない制度へ申請してしまったり、準備不足で申請機会を逃してしまったりする可能性があります。
まずは、両者の違いを比較表で確認してみましょう。

助成金とは
助成金とは、主に企業の雇用維持や人材育成、働きやすい職場づくりを支援するための制度です。厚生労働省が管轄しており、企業が納める雇用保険料を主な財源として運営されています。
助成金の大きな特徴は、定められた要件を満たしていれば受給できる可能性が高いことです。そのため、中小企業でも比較的活用しやすい制度といえるでしょう。
例えば、従業員の教育訓練を実施した場合や、非正規雇用労働者を正社員へ転換した場合などに活用できる助成金があります。
補助金とは
補助金とは、新規事業への挑戦や設備投資、生産性向上など、企業の成長を支援するための制度です。主に国(経済産業省など)や自治体が管轄しており、税金を財源として運営されています。
補助金は、申請すれば必ず受給できるわけではありません。提出した事業計画などの内容が審査され、その結果採択された場合にのみ受給できます。
申請内容の完成度や事業の将来性などが評価されるため、助成金と比べて準備に時間がかかる傾向があります。一方で、制度によっては数百万円から数千万円規模の支援を受けられるケースもあり、大規模な設備投資や事業拡大を検討している企業にとって有効な支援策となります。
どちらを選ぶ?中小企業のための「失敗しない選び方」
「うちの会社は助成金と補助金のどちらを活用すべきなのだろう?」と迷った場合は、まず「何を実現したいのか」を整理してみましょう。
助成金と補助金は、それぞれ支援する目的が異なります。そのため、自社の課題や目標に合わせて制度を選ぶことが重要です。
【目的別の選び方】

このように、「人」に関する取り組みであれば助成金、「事業」や「設備」への投資であれば補助金を検討するとよいでしょう。
例えば、従業員の採用や育成、職場環境の改善を進めたい場合は助成金が活用できる可能性があります。一方で、新たな設備の導入や事業拡大、新サービスの開発などを検討している場合は補助金が適しているケースが多くなります。
ただし、制度ごとに対象や要件は異なります。同じ「設備投資」であっても利用できる補助金が異なる場合があるため、自社の目的を明確にしたうえで制度選びを進めることが大切です。
助成金と補助金は併用できる?
結論からいうと、助成金と補助金は制度によって併用できる場合があります。
例えば、社員研修を実施する際に「人材開発支援助成金」を活用し、その研修に必要なシステムや設備の導入に補助金を活用するといったケースも考えられます。
ただし、同じ経費に対して助成金と補助金を重複して受給することは原則として認められていません。また、制度によっては併用に関する独自のルールが設けられている場合もあります。そのため、複数の制度を活用したい場合は、公募要領や募集要項を確認し、必要に応じて専門家へ相談することをおすすめします。
助成金・補助金申請でよくある失敗例
「これなら自社でも申請できそうだ」と思っても、事前の準備を怠ると受給できなくなってしまう場合があります。
ここからは、中小企業が陥りやすい代表的な失敗例を紹介します。
失敗① 就業規則が整備されていない
助成金の多くは、制度内容を就業規則へ反映していることが支給要件となっています。
そもそも就業規則を作成していなかったり、作成したまま長期間見直していなかったりすると、申請できないケースがあります。
育児休業制度や正社員転換制度などを実施していても、就業規則へ適切に定められていなければ助成金を受給できない場合があるため注意が必要です。
失敗② 申請期限を過ぎてしまう
助成金や補助金には申請期限があり、期限管理は非常に重要です。
必要書類の準備に時間がかかった結果、期限に間に合わず申請できなかったというケースも少なくありません。期限を過ぎると原則として受け付けてもらえないため、制度を活用する際は早めにスケジュールを確認しておきましょう。
失敗③ 必要書類を保存していない
出勤簿や賃金台帳、雇用契約書などの書類は、助成金申請で頻繁に提出を求められます。また補助金申請では、見積書や請求書、領収書などの経費関連書類や、登記簿謄本などが必要になることもあります。
これらの書類は後から作成できないものも多いため、日頃から適切に管理・保管しておくことが重要です。
失敗④ 制度開始前に専門家へ相談しなかった
助成金や補助金の中には、制度を実施する前の準備が必要なものがあります。実施後に相談しても申請できないケースもあるため、活用を考えた段階で専門家へ相談することをおすすめします。
助成金は社会保険労務士、補助金は行政書士や中小企業診断士などがサポートを行っています。専門家へ相談することで、書類作成の負担軽減だけでなく、制度改正や最新情報にも適切に対応しやすくなります。
失敗⑤ 補助金の採択後ルールを理解していない
補助金は採択されたら終わりではありません。事業実施後には実績報告が必要となり、対象経費の支払い証明なども提出を求められます。
ルールを守れない場合は、補助金額の減額や支給対象外となる可能性もあるため注意しましょう。
失敗⑥労働法違反や書類不備があった
助成金では、法令を遵守していることが前提条件です。
例えば、
- 残業代の未払い(計算誤りを含む)がある
- 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)の未締結や未届けがある
- 出勤簿や賃金台帳に不備がある
といった場合は、助成金の申請が認められないことがあります。申請前に労務管理体制を見直しておくことが大切です。
申請前に知っておきたい3つの注意点
注意点① 助成金・補助金は後払いが基本
助成金や補助金は、先に対象となる取り組みや設備投資を行い、その後に支給されるケースが一般的です。
そのため、一時的に自社で費用を負担する必要があります。資金繰りへの影響も考慮しながら、無理のない計画を立てましょう。
注意点② 制度ごとに募集期間が異なる
助成金は比較的長期間募集されるものが多い一方、補助金は募集期間が数週間程度と短いことがあります。
募集開始後に準備を始めると必要書類の作成が間に合わないこともあるため、日頃から情報収集を行い、早めに準備を進めることが重要です。
注意点③ 制度開始前の準備が重要
助成金・補助金ともに、事前準備が結果を左右します。
例えば、助成金では実施前に計画届の提出が必要な場合があり、補助金では採択前の発注や契約が対象外となるケースがあります。制度を活用したいと考えた段階で、専門家へ相談しながら準備を進めると安心です。
まとめ
助成金と補助金は、どちらも返済不要で企業活動を支援する制度ですが、目的や申請方法、受給の仕組みは大きく異なります。
人材採用や社員教育、職場環境の整備など「人」に関する取り組みであれば助成金、設備投資や新規事業への挑戦など「事業」に関する取り組みであれば補助金が適しているケースが多いでしょう。制度ごとに要件や申請手続きは異なるため、自社の目的に合った制度を選ぶことが重要です。
また、助成金・補助金は事前準備が結果を大きく左右します。活用を検討している場合は、早い段階で社会保険労務士や行政書士などの専門家へ相談し、計画的に準備を進めることをおすすめします。

