令和7年度から中小企業の新分野への進出を後押しする中小企業新事業進出促進補助金(通称「新事業進出補助金」)が新設されました。令和7年4月22日から公募要領が公開され、現在は第1回の公募期間中となっています。この記事では新事業進出補助金についてその内容や申請の期限、事業再構築補助金との違い等を説明します。
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中小企業新事業進出促進補助金の概要
新しい事業への進出を後押しする制度
中小企業新事業進出促進補助金はコロナ禍に公募がされていた「事業再構築補助金」の後継制度として令和7年度から新設された補助金制度です。事業再構築補助金と同様に、中小企業が今行っている事業とは別の新しい事業への進出することを後押しし、経営を多角化させることで中小企業の売上拡大や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としています。
経営の多角化とは、今行っている事業とは違う、新しい分野の事業を開始し、収益の軸を増やし経営を安定化させることです。身近なところで経営を多角化している例といえば、コンビニエンスストアが該当するかと思います。元々は商品を販売するだけの小売店ですが、店舗内で調理して販売するのは飲食業。宅配サービスの窓口にもなっていますし、ATMで各種代金の支払いや各銀行の入出金まで可能というように様々な事業を1つの店舗内に展開しています。
中小企業が自社の強みを活かして新しい事業・分野に乗り出すことを支援し、経営の多角化を図り、力をつけてもらうことで、ひいては経済を活性化させたいということが制度の趣旨になっています。
補助対象事業は新事業への展開
中小企業新事業進出補助金で補助対象となる事業は、企業がこれまで取り組んでいない新しい事業です。具体的には「新事業進出要件」をすべて満たす必要があります。
- 製品等の新規性:企業にとって新しい製品やサービスであること。既存の製品やサービスの単なる改良ではなく、明確な新規性が必要です。
- 市場の新規性:これまでの顧客層とは異なる新しい市場への進出であること。既存の市場での販売拡大は対象外です。
- 新規事業の売上高:新たな製品・サービスの売上高が総売上高の10%以上もしくは付加価値額の15%以上となること。

例えば、製造業であれば、これまで自動車用エンジン部品を製造していた中小企業が、新たに航空機用の精密部品を開発・製造する事業や産業用金属部品の加工を行っている中小企業が、医療機器メーカー向けのパーツ製造をする事業等が考えられます。
事業再構築補助金では「業態転換」と言われる、サービスの提供方法を変更する事業も補助対象事業になっていました。具体的には、「飲食店がテイクアウトを始めるという事業や小売店舗がインターネット販売を行う事業などです。
中小企業新事業進出促進補助金ではこの「業態転換」と言われる類型はありません。完全に新たな商品・製品・サービスなどを、これまでの顧客以外の新しい顧客に向けて販売・提供していく事業を計画する必要があります。
補助対象事業者は中小企業者
中小企業新事業進出促進補助金の申請ができる対象事業者は中小企業者です。ここで言う中小企業者とは資本金又は常勤従業員数が規定以下の事業者を指します。法人だけでなく、個人事業主でも従業員数が規定以下であれば補助対象事業者になり得ます。

中小企業者の枠に収まっていなくても、従業員数が300名以下である組合及びその連合会、公益法人等、農事組合法人及び労働者協同組合等も補助対象事業者になり得ますので確認しましょう。

また、中小企業者等に該当していても補助対象外事業者となってしまう場合がありますので注意しましょう。
- 応募申請時点で従業員数が0名の事業者
- 新規設立・創業後1年に満たない事業者
- 収益事業を行っていない法人
- 運営費の大半を公的機関から得ている法人
- 事業再構築補助金、ものづくり補助金の採択を受けたのが、新事業進出補助金の公募締切日から16か月以内である場合
- 事業再構築補助金、ものづくり補助金の事業実施期間中(実績報告が終わっていない)の事業者
- ※⑤⑥には新事業進出補助金も含まれています。
補助金額最大9千万円・補助率1/2
中小企業新事業進出促進補助金の補助額は申請事業者の従業員数により異なります。従業員20人以下の事業者は最大2,500万円、従業員21~50人までの事業者は最大4,000万円と従業員数が多いほど補助上限額が高くなります。従業員101人以上の事業者は一律で最大7,000万円が上限となります。
さらに従業員への賃上げによる特例を使う場合には補助上限額が引上げられ、従業員101人以上の事業者は最大9,000万円の補助を受けることができます。
補助率は従業員数、事業者規模に関わらず1/2ですので補助対象経費の半分が補助されることになります。
従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
従業員数20人以下 | 750万円~2,500万円(3,000万円) | 1/2 |
従業員数21~50人 | 750万円~4,000万円(5,000万円) | |
従業員数51~100人 | 750万円~5,500万円(7,000万円) | |
従業員数101人以上 | 750万円~7,000万円(9,000万円) |
ここで注意したいことは、補助最低額が750万円に設定されていることです。これは、750万円以下の補助は出ないという意味です。つまり、投資額(補助対象経費)が税抜き1,500万円以下の事業内容は補助の対象にならないということです。
補助対象となる経費
中小企業新事業進出促進補助金では機械装置・システム構築費、建物費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費等が補助の対象となります。
特に注目すべきは機械装置・システム構築費もしくは建物費のいずれかを必ず経費として申請しなければいけないことです。補助金を一過性の支出ではなく、資産性のあるものへの投資に使うように促すために設けたルールのようです。
また、広告宣伝・販売促進費を申請する際には「事業計画期間内の総売上見込み額合計÷事業計画年数×5%」の額を上限額とするルールが設定されています。
具体的に数字を当てはめると、5年間の事業計画期間を設定し、総売り上げ見込み額が5億円だった場合、広告宣伝・販売促進費の申請上限額は500万円までということになります。
事業計画期間内の総売上見込み額5億円/事業計画年数5年×5%=500万円
補助対象経費 | 注意点 | 事業再構築補助金との違い |
機械装置・システム構築費 | ▸機械装置・システム構築費or建物費の申請が必須 ▸単価10万円(税抜き)以上のものが対象 ▸公道を走行する車両は対象外 ▸汎用性があり、目的外使用が可能なPC、プリンタ、スマートフォン等は対象外 | ▸補助事業のPRに係るウェブサイトに係る経費は、「広告宣伝・販売促進費」に計上する |
建物費 | ▸機械装置・システム構築費or建物費の申請が必須 ▸建物の単なる購入や賃貸、土地の購入等は対象外 | ▸建物と一体として使用される場合は構築物(門、フェンスや駐車場の舗装等ど)も対象になる ▸貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費は対象外 |
運搬費 | ▸機械装置の購入に係る運搬費用は運搬費に含まない | |
技術導入費 | ▸技術導入費、外注費、専門家経費の支出先に同一の事業者を含むことはできない | |
知的財産権等関連経費 | ▸出願料、審査請求料、特許料等は対象外 | |
外注費 | ▸技術導入費、外注費、専門家経費の支出先に同一の事業者を含むことはできない | ▸申請できる金額の上限は補助金額全体の10%の額まで |
専門家経費 | ▸技術導入費、外注費、専門家経費の支出先に同一の事業者を含むことはできない ▸コンサル費用の申請が可能 | ▸申請できる金額の上限は100万円 |
クラウドサービス利用費 | ▸自社の他事業と共有する場合は対象外 ▸パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用は対象外 | |
広告宣伝・販売促進費 | ▸補助事業で製造又は提供する製品・サービスに必要な広告・宣伝費用のみが対象 ▸既存の自社製品・サービス等の広告や会社全体のPR広告に係る経費は対象外 | ▸申請できる金額の上限は事業計画期間内の総売上見込み額合計÷事業計画年数×5%分のみ |
補助金を受給するためには賃上げが必要
中小企業新事業進出促進補助金は「賃上げ」を目的としているため、申請者には賃上げの計画と実行をするようにルールが決められています。
具体的には「1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最賃の直近5年間の年平均成長率以上にすること」または「給与支給総額の年平均成長率が+2.5%以上にすること」です。さらにこれに加えて「事業所内最低賃金が地域別最低賃金の+30円以上の水準にすること」という条件もあります。この条件に合った賃上げ計画を作成し、実行することが必要です。
賃上げの条件を達成できなかった場合には補助金の返還が必要になりますので、注意しましょう。
事業再構築補助金との違い
中小企業新事業進出促進補助金は事業再構築補助金の後継制度であることから、新事業への展開や対象経費等似ている部分が多くあります。しかし、事業再構築補助金との違いもありますので、代表的なものを解説します。
複数回の申請が可能
事業再構築補助金は補助金の交付を受けられるのは1度のみでした。しかし、中小企業新事業進出促進補助金では事業再構築補助金の交付を受けていても一定期間経過していれば再び申請、交付を受けるチャンスがあります。
補助対象経費に上限が設定されている
事業再構築補助金では建物費や機械装置費等の各経費区分に上限額は設けられていませんでした。しかし、中小企業新事業進出促進補助金では外注費、専門家経費、広告宣伝・販売促進費に申請額の上限が設定されています。また、資産性のあるものへの投資に補助金を利用するよう、機械装置・システム構築費もしくは建物費のいずれかを必ず経費として申請しなければいけないことになっています。この2点は再構築補助金と大きく異なりますので注意が必要です。
構築物費も補助対象になる
事業再構築補助金では建物費が補助対象経費となっており、新築に関しては条件付きで認められていましたが、建物と一体ではない「構築物(門、フェンスや駐車場、広告塔など)」は補助対象外でした。しかし、中小企業新事業進出促進補助金では構築物費も補助対象となります。ただし、構築物のみの経費は補助対象外で、建物と一緒に申請し、この建物と一体的に使用されるものである必要があります。
審査における加点項目と減点項目
事業再構築補助金はコロナ禍からの脱却がテーマの1つになっていたため、コロナ借換加点のようなコロナ関連の加点がありました。中小企業新事業進出促進補助金はコロナ関連の加点はありません。
加点項目 | 中小企業新事業進出促進補助金 | 事業再構築補助金 |
---|---|---|
コロナ借換加点 | × | 〇 |
EBPM加点 | × | 〇 |
パートナーシップ構築宣言加点 | 〇 | 〇 |
特定事業者加点 | 〇 | 〇 |
健康経営優良法人加点 | 〇 | 〇 |
大幅な賃上げに対する加点 | × | 〇 |
ワークライフバランスの取組加点 (えるぼし・くるみん等) | 〇 (えるぼし加点・くるみん加点の2種類) | 〇 |
技術情報管理認証制度の認証加点 | 〇 | 〇 |
成長加速マッチングサービス加点 | 〇 | 〇 |
再生事業者加点 | 〇 | × |
減点項目に関しては両補助金ともあまり変わりはありませんが、中小企業新事業進出促進補助金では過去に中小企業新事業進出促進補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金を受給している事業者で、直近の事業化状況報告(年に1度の成果報告)における事業化段階が3段階(製品が1つ以上販売されている段階)以下である場合には減点をすることになっています。
第1回公募の申請期間は7月10日(木)まで
中小企業新事業進出促進補助金の第1回公募はすでに始まっており、第1回目の申請期間は令和7年4月22日から令和7年3月31日(月)17時までです。年間で3回の公募が予定されています。第1回公募の採択発表予定が10月ですので、結果が出たすぐ後に第2回、同様に第2回の結果が出た頃に第3回というスケジュールとなることが想定されます。
申請には事業計画書の作成が必要
中小企業新事業進出促進補助金を申請するためには事業計画書の作成が必要です。また、採択制の制度のため、的確に公募要領を読み込み、審査項目に沿った記載が必要になります。採択事業者を選定する際には審査項目についての記載を評価されていきます。記載が無ければその項目については評価無し、「0点」となってしまうのです。
全ての審査項目に沿った記載ができる事業計画とすることは非常に難しいですが、採択されるためには審査項目を理解し、場合によっては事業に取り込んでいく必要があります。
事業計画が完成し、必要な添付書類をPDFファイルで揃えたらGビズIDを用いて専用の申請フォームから申請を進めます。
中小企業新事業進出促進補助金の申請サポートはSATO行政書士法人におまかせください
中小企業新事業進出促進補助金を申請するためには詳細な要件の確認から、指針や公募要領に合致した事業計画書の作成、事業者毎で異なる添付資料の準備等、事業者にとっては負担が大きく、分からないことも多くあるでしょう。そこで補助金の申請実績が多数ある専門家に相談することで、“申請できるのか”という基本的なルールの確認から、事業計画の策定サポートまで依頼でき、申請までの負担を最小限にすることができます。
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