「補助金を使いたいけどどのような条件があるの?」「賃上げ要件ってなに?」「賃上げが必要と聞いたけど、どれくらい?」
補助金を活用してみたいという事業者の中には、要件を確認したものの、いまいちよく分からないという事業者も少なくはないでしょう。
補助金の要件は制度毎で異なりますが、今回は中小企業省力化投資補助金の賃上げ要件についてわかりやすく解説します。補助金の要件を理解し、計画的に補助金を活用しましょう。
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中小企業省力化投資補助金の賃上げ要件とは
経済産業省が管轄する補助金の多くでは「賃上げ要件=従業員等の賃金を引き上げる要件」が設定されています。これは補助金で会社を支援する代わりにその成果を従業員の賃金に反映させることで、消費拡大や経済の活性化につなげることを目的として設定されています。
給与支給総額の増加
中小企業省力化投資補助金では賃上げ要件として“給与支給総額”の増加を求めています。
給与支給総額とは会社が1年間で支払う役員・従業員の給与等(給料、賃金、役員報酬、賞与、各種手当)の総額のことです。この給与支給総額を事業計画期間において増加させることが補助金受給の条件です。
具体的には、①給与支給総額を年平均成長率+2%以上増加させること、または②従業員1人当たりの給与支給総額を事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させることのいずれかを満たす必要があります。
東京都で事業を営む従業員30名、給与支給総額1.5億円のA社を例として①②の要件を具体的に説明します。
①給与支給総額を事業計画期間において年平均成長率+2%以上増加させる
A社の給与支給総額が1.5億円ですので、1年後には+2%増の1億5300万円以上に増加させる必要があります。事業計画期間が5年である場合、5年後には給与支給総額は1億6,561万円以上に増加させなくてはなりません。
5年後給与支給総額=基準額150,000,000円×(1+0.02)5
②従業員1人当たりの給与支給総額を事業計画期間において事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させる
事業実施都道府県とは補助金で購入する機械を設置する都道府県と考えます。A社の場合は東京都なので、A社は給与支給総額を東京都における最低賃金の直近5年間の年平均成長率3.9%以上に増加させる必要があります。
そのため、A社の給与支給総額が1.5億円ですので、1年後には+3.9%増の1億5585万円以上に増加させる必要があります。事業計画期間が5年である場合、5年後には給与支給総額は1億8,162万円以上に増加させなくてはなりません。
5年後給与支給総額=基準額150,000,000円×(1+0.039)5
なお、各都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率は参考資料として中小企業省力化投資補助金の公式サイトに掲載されています。

中小企業省力化投資補助金では①②のいずれかをクリアすることが求められますので、A社の場合は少なくとも①をクリアする内容で賃上げ計画をしなくてはなりません。
事業場内最低賃金の増加
中小企業省力化投資補助金の賃上げ要件は“給与支給総額”だけでなく、“事業場内最低賃金”を増加させることも必要です。
事業場内最低賃金とは、事業実施事業所(補助金で購入する機械を設置する事業所)で働く従業員の給与のうち、最も低い時給額のことです。月給者しかいない場合は月給者の賃金を時給換算した上で、最も低い賃金のことです。中小企業省力化投資補助金ではこの事業場内最低賃金を事業計画期間中、事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準にする必要があります。
神奈川県で事業を営む従業員15名、事業場内最低賃金1,225円のB社を例として要件を具体的に説明します。
B社では事業場内最低賃金1,225円の神奈川県の最低賃金と同額です。この事業場内最低賃金を事業計画期間である5年間、毎年神奈川県の最低賃金+30円以上にする必要があります。
例えば神奈川県の最低賃金が毎年45円ずつ上昇した場合には、5年後の事業場内最低賃金は1,480円以上になっていなければなりません。
| 基準額 | 1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 神奈川県の最低賃金(円) | 1,225 | 1,270 | 1,315 | 1,360 | 1,405 | 1,450 |
| 事業場内最低賃金(円) | 1,225 | 1,300 | 1,345 | 1,390 | 1,435 | 1,480 |
一般型は賃上げが必須、カタログ注文型は任意
中小企業省力化投資補助金の賃上げ要件は一般型に申請する場合は必須の要件です。しかし、カタログ注文型は必須要件になっていません。カタログ注文型では賃上げ要件が任意ですが、要件を達成することで補助上限額を引き上げることができます。
一般型は補助上限額がもともとカタログ注文型よりも高額に設定されているため、賃上げ要件が必須であり、申請のハードルが少し高く設定されています。
| 一般型 (必須要件) | □1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上増加させる計画とすること。 □事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準とすること。 |
| カタログ注文型 (任意要件) | 申請時と比較して、「事業場内最低賃金を45円以上増加させること」、「給与支給総額を6%以上増加させること」の双方を補助事業実施期間終了時点で達成する計画とすること。 |
賃上げ要件を達成できない場合は補助金返還も
賃上げ要件は単に、賃上げの計画をして提出すればよいというものではなく、賃上げ要件未達成の場合には、未達成の比率に合わせて補助金額の一部の返還が求められる場合があります。そのため、しっかりと実現可能な賃上げ計画を策定するとともに、計画数値を達成していく必要があります。
ただし、天災や事業者の責めに帰さない理由等により賃上げ要件を達成できない場合には補助金の返還は求められません。
一般型第5回公募中公募締め切りは令和8年2月下旬(予定)
中小企業省力化投資補助金一般型第5回公募の締切は令和8年2月下旬が予定されています。公募開始は令和7年12月中旬、申請受け付け開始は令和8年2月上旬で予定されています。詳細な日程は後日公表予定です。年始で忙しくなる時期に申請受け付けが始まりますので、申請を検討される事業者は早めに申請準備を進めましょう。
なお、令和7年11月28日に公表された情報では、第3回公募の採択率は66.8%でした。中小企業庁で公募している補助金は40%~50%程度の採択率のものが多いため、中小企業省力化投資補助金の採択率は高めであると言えるでしょう。省力化機器への投資を検討している事業者は賃上げ要件等と比較した上で補助金の申請も検討してみましょう。
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まとめ
中小企業省力化投資補助金一般型の賃上げ要件は給与支給総額と事業場内最低賃金の2種類をカバーしなければなりません。賃上げ要件を達成しない場合には補助金が返還になる可能性もあります。
補助金の活用を検討する際には、投資内容と合わせて賃上げ要件を確認し、補助額に対して必要な賃上げ額等も検討しましょう。
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