販路開拓や業務効率化に取り組む事業者を支援する「小規模事業者持続化補助金」。2025年度2回目の公募となる第18回公募は2025年10月3日より公募が開始されます。
「補助金申請は初めてでよくわからない・・・」「何から始めたら良いの…?」「採択されるには何を押さえるべき?」
このような不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、第18回公募の最新スケジュールとあわせて、採択の可能性を上げるためのポイント、今から始めるべき事前準備をわかりやすく解説します。
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小規模事業者持続化補助金とは
設備投資や広告費に使える補助制度
小規模事業者持続化補助金は小規模事業者の持続的な経営に向けた販路開拓の取組や、その取組と併せて行う業務効率化の取組を支援する制度です。販路開拓に必要な設備投資や広告費等に利用することができます。
<申請例>
- 建設業:新たな工法を取り入れ、新規顧客の集客を図るため、必要な建設機器を購入する
- サービス業:美容室が新規サービスとしてまつげや眉毛に関する施術を行うため、施術台等の必要な設備を購入する
- 製造業:新商品の開発・製造と製造コスト削減に向けて、必要な調理機の購入や製造ラインの強化を行う
- 宿泊業:シニア層を取り込むため、既存の施設のバリアフリー工事とバリアフリーであることのPR活動を行う
- 飲食業:宅配・テイクアウト販売の実現のため、急速冷凍機等の導入を行う
小規模事業者が対象
小規模事業者持続化補助金の対象事業者はその名の通り「小規模事業者」です。小規模事業者とは、従業員数が一定以下である事業者(法人または個人事業主)のことで、この一定の従業員数は業種により異なります。
業種 | 従業員数 | 具体的な業種の例 ※日本標準産業分類の大分類又は中分類 |
---|---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5名以下 | G.情報通信業 I. 卸売業、小売業 K.不動産業、物品賃貸業 L.学術研究、専門・技術サービス業 M.飲食サービス業 N.生活関連サービス業 O.教育、学習支援業 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20名以下 | 75.宿泊業 80.娯楽業 |
その他製造業 | 20名以下 | 上記以外の業種 |
従業員数は、「常時使用する従業員」の人数です。常時使用する従業員なので、正社員・契約社員を含みます。また、パート・アルバイト従業員でも正社員の所定労働時間の3/4以上労働する従業員であれば人数に含みます。
例えば、正社員の所定労働時間が週40時間(週5日8時間勤務)である場合、週に30時間以上働くパート・アルバイト従業員は従業員数としてカウントします。なお、役員と専従者は従業員に含みません。
ただし、従業員数が小規模事業者に当てはまったとしても医師・歯科医師、医療法人、一般社団法人、学校法人等は補助対象外になりますので、注意してください。
対象にならない者 |
---|
✕ 医師・歯科医師・助産師 ✕ 協同組合等の組合 ✕ 一般社団法人、公益社団法人 ✕ 一般財団法人、公益財団法人 ✕ 医療法人 ✕ 宗教法人 ✕ 学校法人 ✕ 農事組合法人 ✕ 社会福祉法人 |
補助額は最大250万円・補助率は2/3
小規模事業者持続化補助金の一般型は通常補助額50万円、補助率は2/3です。しかし、いくつかの特例制度を使えば、補助額を最大250万円まで引き上げることができます。それは、①インボイス特例と②賃金引上げ特例です。
①インボイス特例とは「2021年9月30日から2023年9月30日の期間に免税事業者であった事業者」もしくは「2023年10月1日以降に創 業した事業者」のうち、インボイス事業者(適格請求書発行事業者)の登録を受けた事業者に当てはまれば、元々の補助上限額50万円にさらに50万円上乗せし、補助上限額を100万円とすることができる特例です。
※インボイス事業者の登録:消費税の仕入税額控除に必要な書類を発行するために、税務署に事前登録する制度のこと。
②賃金引上げ特例とは、補助金が採択された後、補助事業の実施期間中に事業場内最低賃金を+50円以上とする場合に元々の補助上限額50万円にさらに150万円上乗せし、補助上限額を200万円とすることができる特例です。ただし、賃金引上げ特例は申請時に従業員が0名の場合、その後雇用する予定があったとしても、利用することができませんのでご注意ください。
①インボイス特例と②賃金引上げ特例のいずれも満たす場合には補助上限額を250万円まで引き上げることができます。
第18回公募は2025年11月28日17時締切り
次回公募予定の第18回公募は2025年10月3日(金)から公募が開始され、2025年11月28日(金)17時に公募が締め切られます。第17回公募が2025年6月13日(金)までであったため、次回の公募締切までは5カ月空くことになります。
しかし、まだ時間があるからと申請準備を後回しにすることは得策ではありません。
公募間隔が空くということはそれだけ申請者数が多くなり、補助金獲得の競争率が上がります。そのため、早めに申請準備を始め、より抜け目のない事業計画を作成する必要があるのです。
補助対象になる経費は販路開拓や業務効率化に必要なもの
小規模事業者持続化補助金の対象となる経費は、機械装置やチラシの作成等の販路開拓や業務効率化に必要な経費です。具体的には①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費、⑤旅費、⑥新商品開発費、⑦借料、⑧委託・外注費の8区分に分けられます。
特に注意が必要な経費は③ウェブサイト関連費です。ウェブサイト関連費は商品販売の為のウェブサイト作成の費用やシステム開発等の費用が該当し、これを対象にしたいという事業者も多いと思います。しかし、ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の1/4の額までしか申請をすることができません。
例えば、補助金を200万円まで申請したい場合、ウェブサイト関連費は200万円の1/4である50万円までしか申請をすることができません。
補助対象経費区分 | 経費例 | 注意点 |
---|---|---|
①機械装置等費 | ▸生産販売拡大のために使用するスチームコンベクションオーブンや冷凍冷蔵庫等 ▸新たなサービス提供のための製造・試作機械(特殊印刷プリンター等) | ▸自動車やパソコン、事務用プリンター、複合機、タブレット端末、カメラ、PC周辺機器等の汎用性が高いものは対象外 ▸通常の事業活動のための費用、単なる取替え更新の機械装置等の購入は補助対象外 |
②広報費 | ▸チラシ・カタログの外注や発送 ▸郵送によるDMの発送 ▸パンフレットの作成 ▸街頭ビジョンやデジタルサイネージ広告への掲載料 | ▸ウェブや動画に関する広報費用は③のウェブサイト関連費にあたる |
③ウェブサイト関連費 | ▸商品販売のためのウェブサイト作成や更新 ▸システム開発(オフラインのシステムも含む) ▸アプリケーション開発 ▸業務効率化のためのソフトウェア導入 | ▸ウェブサイト関連費のみによる申請はできない ▸ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4の額が上限 ※補助金交付申請額200万円の場合は50万円までしか申請できない |
④展示会等出展費 | ▸オンラインや海外での開催のものを含む展示会の出展料 ▸展示会の際に必要な翻訳料・通訳料 | ▸交付決定前に出展契約を行ったものは対象外。補助事業実施期間中に契約・会期・支払を終えられることが必要。 |
⑤旅費 | ▸事業計画書に記載した展示会会場までの交通費、宿泊費 | ▸通常の営業に使用した旅費は対象外 ▸実費ではなく、旅費規程に従って補助額を算出する |
⑥新商品開発費 | ▸新製品・商品の試作開発用の原材料の購入 ▸新パッケージデザイン費用 | ▸開発・試作した商品をそのまま販売することはできない ▸試作開発用目的の購入で使い切らなかった材料は補助対象外 |
⑦借料 | ▸商品・サービスPRイベントの会場の借料 | ▸既存の事務所や店舗にかかる賃借料は対象外 |
⑧委託・外注費 | ▸店舗改装・バリアフリー化工事 | ▸自社でできる作業を委託・外注することはできない |
採択制
小規模事業者持続化補助金は申請をしたすべての事業者が補助金をもらえるという制度ではありません。申請の際に提出する事業計画書を有識者が審査し、採択事業者(合否)を決めていきます。そのため、審査ポイントを押さえて事業計画書を作成することが補助金を受給するためには必要不可欠です。
これまでの公募回ではその公募回毎に採択率や申請数に大きな違いがありました。既に採択結果が出ている第16回公募では7,371件の内、2,741件が採択されており、採択率は37.2%と低い結果でした。しかし、第16回公募よりも前の第11回~15回までの公募では平均採択率が50%を超えています。
また、現在公募が終了し、審査が行われている第17回公募では補助金事務局より「大変多くの申請があった」旨が公表されており、審査結果は9月下旬の公表にされる予定です。
このように採択率や申請数は公募回毎に異なる為、どの公募回で申請しても採択されるような事業計画書に仕上げていく必要があります。
公募回 | 締切日 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
---|---|---|---|---|
第11回 | 2023年2月20日 | 11,030 | 6,498 | 58.9% |
第12回 | 2023年6月1日 | 13,373 | 7,438 | 55.6% |
第13回 | 2023年9月7日 | 15,308 | 8,729 | 57.0% |
第14回 | 2023年12月12日 | 13,597 | 8,497 | 62.5% |
第15回 | 2024年3月14日 | 13,336 | 5,580 | 41.8% |
第16回 | 2024年5月27日 | 7,371 | 2,741 | 37.2% |
※申請件数と採択件数は中小企業庁のWEBサイトにより公開されている数字をもとに表を作成しています。
採択の可能性を上げるポイント
経費配分
小規模事業者持続化補助金で採択の可能性を上げるポイントの1つは「経費配分」です。もっと簡単に言うと、補助金で申請する経費をどのように組み合わせるかです。小規模事業者持続化補助金では“小規模事業者の持続的な経営に向けた販路開拓の取組”を支援します。そのため持続的に売り上げをあげられるような取り組みや計画が重要視されます。例えば、「機械装置」のような事業者の資産になり得るもの・継続的に使用できるものを購入するような計画です。
反対に、一過性の支出に当たるような広告費や旅費等に重きを置いた計画は申請してもなかなか採択されません。これは支出した経費に対しての効果が一時的であり、持続的な売り上げを期待することが難しいと判断されることが多いからです。
このような考え方からすると、機械装置のような資産性のある経費を中心に、他に必要になるであろう広告費やWEBサイト関連費、委託・外注費等をバランスよく組み合わせて申請することが採択の可能性をあげる重要なポイントとなるでしょう。
審査項目に沿った計画を作成する
採択の可能性を上げるポイントの2つ目は審査項目に沿った計画を作成することです。採択制の補助金制度では一般的に審査のポイントが公募要領に示されています。小規模事業者持続化補助金の公募要領でも同様に審査ポイントが示されています。
例えば「自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みや弱みも適切に把握しているか」や「経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場や顧客ニーズを捉えたものとなっているか」、「販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか」というような内容です。
事業計画書にはこれらの審査項目を的確に盛り込み、作成することが採択の近道になるでしょう。
今から始めるべき事前準備
小規模事業者持続化補助金第18回公募は2025年10月3日(金)から公募が開始されます。公募開始までに期間がありますが、申請を検討している場合には早めに準備を始めましょう。今からできる事前準備を紹介します。
GビズIDの取得
小規模事業者持続化補助金の申請方法はj-grants(ジェイグランツ)という申請システムを利用した電子申請のみです。このj-grantsを利用するためには、法人あるいは事業者毎に発行されるGビズIDというIDが必要です。GビズIDは取得するのに2~3週間かかる場合もあるため、申請期限間近に取得しようと思っても期限に間に合わないことがあります。早めに取得をしましょう。
また、既にGビズIDを取得した事業者でも、法人の本店住所や代表者等に変更が生じている際には、GビズIDに登録している情報の変更や、GビズIDを再取得しなければならない場合があります。心当たりがある事業者は必ず変更や再取得が必要かどうかを確認するようにしましょう。
商工会議所・商工会への事前相談
小規模事業者持続化補助金は申請を行う前に、申請事業者の本店所在地を管轄する商工会議所又は商工会に事前相談が必要です。事前相談では事業計画書や申請に必要な書類を持って、商工会議所又は商工会の窓口に直接訪問し、書類のチェックを受けます。書類に問題がなければ商工会議所又は商工会から「事業支援計画書」を発行してもらえます。この「事業支援計画書」は申請に必ず必要になりますので、申請の前に必ず商工会議所又は商工会に行き、発行してもらいましょう。
また、それぞれの商工会議所・商工会で事前相談の必要書類や予約の要否等が異なります。必ず自社の管轄の商工会議所又は商工会に必要書類や予約について確認を行いましょう。特に事業者が多い東京都内の商工会議所・商工会はすぐに予約枠が埋まってしまいます。申請期限までに予約ができないということにならないよう、できるだけ早く準備と予約をしましょう。
加点項目を検討
小規模事業者持続化補助金では審査時の加点項目が設定されています。加点項目は条件に当てはまらないとそもそも適用ができないものと、今からでも準備して適用できるものがあります。今から準備して適用できる加点項目としては「事業継続力強化計画策定加点」があります。
事業継続力強化計画とは中小企業が自社の防災・減災に関する事前対策を策定し、申請することで、経済産業大臣が事業継続力強化計画として認定する制度です。この事業継続力強化計画に認定された場合、小規模事業者持続化補助金では加点となります。事業継続力強化計画の申請から認定までは45営業日程度の期間ですので、今から準備を行えば申請までに認定してもらうこともできるでしょう。
また、事業継続力強化計画に認定された場合には税制優遇を受けられたり、認定事業者向けの補助金制度があったりもします。加点としてだけではなく、これらの制度を利用することや災害対策を検討するきっかけとして事業継続力強化計画の申請を検討することも良いでしょう。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路拡大や業務効率化に取り組む際の費用を国が支援する制度です。しかし、採択制のため資産性のある設備投資を中心にした計画や審査項目を押さえた事業計画書が重要です。
小規模事業者持続化補助金の第18回公募は2025年11月28日締切。GビズIDの取得や商工会議所での事前相談など準備が必要となるため、余裕を持った計画づくりが採択への第一歩となります。
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