最近では、働き方の多様化が進み、正社員だけでなく契約社員を雇う中小企業も増えてきました。特に、新しく契約社員の制度を導入した会社では、「正社員用の就業規則はあるけれど、契約社員用にも別に必要なのだろうか?」「そもそも契約社員に就業規則は必要なの?」と悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、契約社員の就業規則の必要性や作成のポイントをわかりやすく解説します。
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契約社員の就業規則は必要です
まず、労働基準法では常時10人以上の労働者を雇っている会社に対し、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。ここでいう「常時10人以上の労働者」には正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなど、すべての従業員が含まれます。つまり、契約社員がいる場合、その労働条件を就業規則に盛り込むことが必要なのです。
労基署からの指摘・法的リスクに注意
事業場に契約社員がいるにもかかわらず、契約社員の労働条件が就業規則に明記されていない場合、就業規則の作成・届出義務を果たしたことにはなりません。この状態で労働基準監督署の調査が入った場合、指摘を受けたり、最悪の場合は労働基準法違反となり罰則を受けるリスクもあります。こうしたリスクは、会社にとって大きな負担や信用低下につながる可能性があるため注意が必要です。
同一労働同一賃金の観点
判例や法令の改正により「同一労働同一賃金」の原則が重視され、正社員と契約社員の間に不合理な待遇差がないかどうかが問われるようになっています。仕事内容がほぼ同じなのに賃金や手当の差が大きい場合、きちんとした理由や説明ができなければ、企業側にとって不利な立場に立たされる可能性があります。そのため、雇用形態ごとに就業規則を作成して労働条件を明確にし、不合理な差が生まれないよう配慮することが重要です。
トラブル防止と信頼関係の構築
就業規則が整備されていないと、契約社員からの誤解や不満が生じやすく、最終的に労使トラブルへとつながるリスクがあります。一方、しっかりとしたルールを整備しておけば、会社側が労働条件を正しく説明できるようになり、従業員との信頼関係を築くことにもつながります。働く人たちが安心して力を発揮できる環境を整えるためにも、契約社員に関する就業規則の整備は重要といえます。
契約社員の就業規則は正社員と分けて作成するのがおすすめ
契約社員がいる会社では、就業規則に契約社員に関する記載が必要です。これは労働基準法で定められた義務であり、契約社員の労働条件をきちんと明文化しておく必要があります。
記載の方法ですが、法律上、正社員と契約社員で別々の就業規則を設けなければならないというルールはありません。実際、1つの就業規則の中に、正社員に関する規定と契約社員の規定を組み込んでいるケースも少なくありません。しかし、実務的には分けて作成することを強くおすすめします。
正社員と契約社員の労働条件の違いに注目
正社員と契約社員とでは、労働条件にさまざまな違いがあります。たとえば、契約期間、更新の有無、賞与の支給条件、退職金制度、福利厚生の適用範囲などが異なるのが一般的です。正社員向けの就業規則に契約社員の条件を無理やり盛り込むと、規則が複雑化し、社内でも正確に理解されないリスクがあります。
トラブル防止のために分けておくのが安心
就業規則を分けていないと、労働条件の誤解から労使トラブルにつながるリスクがあります。たとえば、契約社員が正社員向けの手当や休暇制度が自分にも適用されると誤解してしまった場合、待遇の不公平感から不満を抱くことがありえます。また、解雇や契約終了の場面では、正社員と契約社員で適用されるルールが異なるため、就業規則が一本化されていると、どのルールに基づいて判断すべきか分からなくなり、余計なトラブルにつながりかねません。
契約社員の就業規則には何を記載するべき?
契約社員の就業規則を作成する際、何を記載すべきか迷う担当者は多いでしょう。基本的には、契約社員用の就業規則に記載する内容は正社員の場合と同じです。
労働基準法では、就業規則に必ず書かなければならない内容(絶対的必要記載事項)と、特定の制度を設ける場合に書く必要がある内容(相対的必要記載事項)が定められています。以下で、それぞれ詳しく説明していきます。
絶対的必要記載事項とその重要性
絶対的必要記載事項とは、どのような会社や労働者であっても、必ず就業規則に記載しなければならない内容です。契約社員の就業規則を作成する場合も、これらの事項が抜けていると、労働基準法違反となるリスクがあり、また実務上もトラブルの原因となり得ます。
具体的には次の3つの種類があります。
- 労働時間・休憩・休日・休暇等
始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、そして交替制勤務の場合は勤務の交替に関する事項を定める必要があります。 - 賃金に関する事項
賃金の決定方法、計算および支払方法、賃金の締切日と支払日、昇給の有無とその取り扱いを明確に記載します。 - 退職に関する事項
退職の手続きや条件、解雇の事由についても詳細に書いておくことが求められます。
これらの記載がない場合、会社は就業規則に基づいて契約社員に対して指揮命令を行うことができなくなり、トラブルが起きた際に不利な立場に立たされる可能性があります。就業規則を整備することで、労使間の誤解や紛争を未然に防ぐ効果が期待できます。
相対的必要記載事項と具体例
一方で、相対的必要記載事項とは、特定の制度や取り決めを設ける場合にのみ記載が必要となる内容です。たとえば、会社が契約社員に退職手当を支給する場合、就業規則にはその内容や条件をきちんと記載しておかなければなりません。具体的には以下のような項目があります。
- 退職手当に関する事項
契約社員に退職金を支給するなら、その基準や金額、支給方法を明記します。 - 臨時の賃金(賞与等)、最低賃金額に関する事項
賞与(ボーナス)を支給する場合や、会社独自の最低賃金額を設定する場合は、その内容を記載します。 - 食費・作業用品の負担等に関する事項
社員食堂の利用料や制服、道具代の自己負担が発生する場合、これも明示しておく必要があります。 - 安全衛生・職業訓練・災害補償・傷病補助
業務中の安全確保の取り組み、職業訓練の内容、災害時の補償や業務外の病気・ケガの補助など。 - 表彰・制裁に関する事項
契約社員向けの表彰制度や懲戒処分の内容も、実施するならルールとして就業規則に書きます。 - その他全労働者に適用される事項
会社全体のルールとして、契約社員も対象になるものがあれば、それも含めます。
制度を設けるかどうかは会社の方針次第ですが、制度を設けた場合には必ずその内容を明文化し、従業員に周知することが重要です。曖昧なまま運用してしまうと「そんな制度は知らなかった」という誤解が生じ、後々のトラブルにつながりかねません。
契約社員の就業規則を作成する際の注意点
契約社員の就業規則を作成する際、単に法律に基づいて必要な項目を記載すればよいというわけではありません。労働環境の変化や最新の法改正、判例の動向などを踏まえ、実務上注意しておくべきポイントがいくつかあります。ここでは、特に重要な「無期転換ルールへの対応」と「不合理な待遇の防止」について詳しく解説します。
無期転換ルールに対応
無期転換ルールとは、有期労働契約(期間を定めた契約)が繰り返し更新され、通算で5年を超えた場合に、労働者側から申し込みがあれば期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に切り替わるというものです。つまり、同じ契約社員が5年以上働き続けた場合、本人が希望すれば正社員と同じように無期限の雇用契約へ転換できる権利が発生します。
この無期転換ルールに対応するためには、企業側は以下のような準備が必要です。
- 申し込み手続きの明確化
就業規則や社内規程で、無期転換の申し込み方法を明記しておくことが重要です。ただし、法律上は申し込み方法に制限がないため、たとえ就業規則で「書面による申し込みが必要」と定めていても、口頭で申し込みがあれば有効となります。 - 無期転換後の労働条件の整備
無期転換後は、単に契約期間が変わるだけでなく、適用される就業規則や労働条件が変わる場合があります。そのため、無期転換社員専用の就業規則を用意するか、正社員規程と区別して管理できる体制を整えておくと、後のトラブル防止につながります。 - 対象者の把握と管理
社内でどの契約社員が無期転換ルールの対象になるか、管理簿や人事システムなどでしっかり把握しておくことも重要です。現場の管理者任せにせず、会社全体で情報を共有し、適切に対応できる仕組みを整えておきましょう。
無期転換は企業にとって義務ではありませんが、対象者から申し出があった場合には拒否できないルールです。そのため、実務では予防的な備えが重要なのです。
不合理な待遇
近年、同一労働同一賃金の原則が強調されるようになり、正社員と契約社員の待遇格差をめぐる問題が注目されています。特に2020年の労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法の改正により、不合理な待遇差を設けることは禁止されるようになりました。
ここで重要なのは、単に賃金総額やボーナスの有無だけを見て判断されるわけではないという点です。裁判例などでは、以下のような観点で判断が行われます。
- 職務内容の違い
契約社員と正社員で、日々の仕事内容や責任の範囲に違いがあるか等 - 職務内容・配置の変更範囲
正社員には異動や転勤があるが、契約社員は配属が限定されているか等 - その他の事情
労働時間の長さ、雇用の安定性、教育訓練の内容など。
つまり、賃金や手当の一部について差があったとしても、それが合理的な理由に基づいていれば違法とはされません。しかし逆に、合理的な理由が説明できない場合は不合理な待遇とみなされ、是正を求められるリスクがあります。
契約社員の就業規則を作成する際は、正社員との労働条件の違いを明確にし、その違いに正当な理由があるかどうかを社内で検証しておくことが重要です。例えば、通勤手当や住宅手当、福利厚生などの支給内容に差を設ける場合、それぞれの根拠を説明できるよう準備しておきましょう。
まとめ
契約社員の就業規則は、単に法律で求められているから作るというだけでは不十分です。無期転換ルールや同一労働同一賃金といった最新の法改正に対応し、企業の実態に即した内容にしておかないと、後々思わぬトラブルを招く可能性があります。
特に中小企業では、労務管理のリソースが限られていることが多いため、専門家のアドバイスを受けながら、実効性のある規則を整備しておくことを強くおすすめします。もし、現在の就業規則に不安のある場合や、これから新たに就業規則の整備を検討されている場合には、ぜひSATO社会保険労務士法人まで気軽にご相談ください。
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