キャリアアップ助成金の計画書とは?作成方法や提出の注意点を解説

中小企業の経営者や人事担当者のみなさま、「従業員の定着率を上げたいけれど、なかなか難しい…」「正社員化を進めたいけど、コストもかかるし…」 とお悩みではありませんか?

そんな時に活用したいのが、キャリアアップ助成金です。

キャリアアップ助成金は、契約社員やパートタイマーなどの非正規雇用の従業員の、企業内でのキャリアアップを支援する制度です。人材の定着や職場環境の安定にもつながることから、多くの中小企業にとって魅力的な助成金といえます。ただし、キャリアアップ助成金を受け取るには、「キャリアアップ計画書」という書類の提出が必須です。この計画書を提出していなければ、たとえ条件を満たしていても助成金は受け取れません。

本記事では、この「キャリアアップ計画書」に焦点を当て、「そもそも計画書って何?」「どうやって作成するの?」「提出の際に気を付けることは?」といった基本的な内容を、初めて助成金申請に取り組む方でも迷わないように、わかりやすく解説します。

計画書の役割と作成のポイントをしっかり理解して、スムーズな助成金申請につなげましょう!

目次

キャリアアップ助成金の「計画書」とは何か?

キャリアアップ計画書とは、一言でいうと「今後、非正規雇用の従業員に対して、どのようなステップで待遇改善を進めていくか」「どのように正社員へと転換していくか」という具体的な方針を記載する書類です。

例えば、「どのような教育や研修を実施してスキルアップを促し、〇年後に正社員として登用する」といった内容を、対象者・期間・取り組み・目標などとともに記載します。

この計画書は、企業が「どのような取り組みを通じて従業員のキャリアアップを図るのか」を明確にし、その取り組みに対して国から助成金を受け取るための基盤となる書類です。

なぜ「計画書」が必要なのか?重要な3つの理由

「なぜわざわざそんな書類が必要なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかしこの計画書は、単なる事務的な提出書類ではなく、制度上とても重要な役割を担っています。その理由は以下の3点に集約されます。

  • 国に対し、どのような取り組みを行うのかを事前に示すため
  • 助成金が適正に使われていることを確認するため
  • 計画に沿った実施が、助成金受給の条件となっているため

つまり、「あとから内容を変える」「とりあえず出しておく」といった対応は基本的に認められていません。計画書は形式的な書類ではなく、企業と国との間で交わす取り組みの「約束」だと捉えてください。

計画書は、助成金申請のスタート地点!

キャリアアップ助成金の申請手続きにおいて、この計画書は最初のステップであり、最も重要な書類のひとつです。

助成金を受け取るためには、まずこの計画書を作成し、所轄の労働局やハローワークに提出して事前の承認を受ける必要があります。計画書を提出する前に正社員転換などの取り組みを行ってしまった場合、その後に申請しても助成金が支給されないことがあるため注意が必要です。

助成金を確実に受け取るためには、制度のルールを正しく理解し、適切なタイミングで正確に計画書を作成・提出することが大前提となります。この計画書がしっかり作成できていれば、その後の申請や実施手続きもスムーズに進む可能性が高まります。

キャリアアップ助成金の計画書の基本の流れ

「キャリアアップ計画書って、どう作ればいいの?」

そんな不安をお持ちの方に向けて、ここでは計画書作成の基本ステップをわかりやすくご紹介します。

キャリアアップ助成金の計画書の基本の流れ

STEP1.全6コースの中から、どのコースを利用するかを決める

キャリアアップ助成金には、全部で6つのコースがあります。たとえば、非正規社員を正社員にする「正社員化コース」や、賃金規定を改定して基本給を引き上げる「賃金規定等改定コース」などです。

計画書を作成する前に、まずは「どの取り組みで助成金を活用したいのか」を明確にし、コースを選びましょう。選んだコースによって、計画書に記入する内容や提出書類・添付書類も異なります。

STEP2.対象となる従業員を選定する

次に、「誰を対象にキャリアアップを行うのか」を決定します。 契約社員やパートなどの非正規雇用の従業員が対象となり、「転換後も継続的に雇用される見込みがあること」が条件となります。

STEP3.計画期間・実施時期を設定する

対象者が決まったら、「いつ」「どのように」キャリアアップを実施するかを具体的に検討します。申請時には、その内容を証明する書類の提出が求められます。

STEP4.計画書に必要事項を記入する

利用するコースが決まったら、厚生労働省の公式サイトから最新のキャリアアップ計画書様式をダウンロードし、必要事項を記入します。最新版の様式を使用することが重要です。

記入例が掲載されたパンフレットも公開されていますので、参考にすると安心です。

※参照
①厚生労働省HP キャリアアップ助成金 「申請様式ダウンロード(キャリアアップ助成金)(令和7年4月1日以降の取組に係る様式)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00015.html
②厚生労働省HP キャリアアップ助成金 「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)」 https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/content/contents/001841874.pdf

STEP5.添付書類を準備する

計画書と併せて、以下のような書類が必要になります(コースにより異なる)

  • 従業員の雇用条件がわかる書類:就業規則または労働条件通知書
  • 賃金体系や手当の内容を確認できる書類:賃金規定または給与規定
  • その他:訓練計画書、研修カリキュラム、タイムカード、出勤簿など(該当コースの場合)

STEP6.管轄の労働局に提出する

記入・書類の準備が整ったら、提出前に以下の点を確認しましょう。

  • 記入漏れ・誤字脱字がないか
  • 日付や数字は正確か
  • 添付書類はすべて揃っているか

キャリアアップ計画書の書き方 ―不支給を防ぐコツとよくあるミス

計画書は、キャリアアップ助成金を受け取るための、最初の最も重要な関門です。近年は審査の厳格化が進み、形式的に作成しただけでは不支給になるケースも少なくありません。ここでは、キャリアアップ計画書の基本的な書き方・構成に加え、現場でよくある失敗例とその対策をあわせてご紹介します。

キャリアアップ計画書の構成と記入内容

キャリアアップ計画書の様式は、「表紙」「共通事項」「キャリアアップ計画」の3つのパートに分かれています。

キャリアアップ計画書の構成と記入内容

特に「キャリアアップ計画」部分は、審査上の重要ポイントです。対象者や取り組み内容、実施スケジュールに具体性が求められます。途中で内容変更があった場合は、「計画変更届」の提出も必要です。

よくある失敗とその対策

キャリアアップ計画書を作成する際に陥りやすい失敗と、それらを防ぐための対策を知っておくことで、不支給のリスクを大幅に減らすことができます。

失敗例①:対象者の条件を満たしていない

各コースには、対象となる労働者の要件が厳密に定められています。申請前には、必ず最新の対象者要件を確認しましょう。

失敗例②:書類間の整合性がない

就業規則や賃金規定などの社内規定と、計画書の記載内容に齟齬があると、不支給のリスクが高まります。制度変更や賃金改定を行った場合は、関連するすべての社内規定が最新の内容となっているか、整合性が取れているかを徹底的に確認しましょう。

失敗例③:古い様式を使用している

キャリアアップ計画書の様式は、年度や法改正に伴い変更されることがあります。必ず最新の様式をダウンロードして使用してください。古い様式で提出した場合、受理されない可能性があります。

失敗例④:労働関係法令を遵守していない

キャリアアップ助成金は、労働者の処遇改善を目的とした制度です。そのため、未払い賃金の存在、有給休暇の不適切な付与、過重労働など、労働関係法令に違反している場合は助成金の対象外となります。申請前に、賃金台帳やタイムカードなどの帳票類を確認し、適切に運用されているか入念にチェックしましょう。

失敗例⑤:支給申請期間を過ぎてしまう

キャリアアップ助成金には、計画書の提出期限だけではなく、取り組み後の支給申請にも厳密な期限が設けられています。この期限を1日でも過ぎると、申請は一切受け付けてもらえません。計画の策定段階から、支給申請までのスケジュールを逆算し、余裕を持って準備を進めることが重要です。

失敗例⑥:計画と実績に乖離がある

キャリアアップ計画書に記入した内容と、実際の取り組みに大きな違いがあると、不支給のリスクが高くなります。計画を立てる際には、現実的に実行可能かどうかを十分に検討し、無理のない計画を立てましょう。

まとめ

キャリアアップ助成金の申請プロセスは、「計画 → 実施 → 支給申請」という明確なステップで構成されています。その中でも、最初の関門となるキャリアアップ計画書は、全体の流れを左右する重要な起点です。この段階でのミスや認識の齟齬は、その後の申請プロセス全体に大きな影響を与え、最終的な不支給に繋がることも少なくありません。

近年、助成金制度の運用はますます厳格化しており、審査もより細かくチェックされる傾向にあります。だからこそ、事前の準備と確実なチェック体制の構築、そして制度への深い理解が不可欠となります。

キャリアアップ助成金の申請プロセスに不安がある場合は、社労士に相談することをお勧めします。社労士は、助成金申請の専門家として、適切なアドバイスや申請代行を通じて、スムーズかつ確実な受給を強力にサポートしてくれます。

さらに、助成金申請に取り組むことは、単に資金を受給するだけでなく、社内の労務管理体制の見直しや整備が進む絶好の機会でもあります。結果として、組織全体の労務環境が向上し、従業員満足度の向上や生産性アップにも繋がるというメリットもあります。

キャリアアップ助成金を確実に活用し、従業員のキャリアアップを実現するためにも、制度の仕組みを正しく理解し、信頼できる専門家のサポートを上手に活用しましょう。

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