障害のある方を雇用している、または今後雇用を検討している中小企業の経営者・人事担当者のみなさま。
「障害者雇用を増やしたいけれど、定着支援の体制やコスト面が不安」、「契約社員として働く従業員を正社員にしたいが、手続きや資金がネックになっている」そんなお悩みを抱えていませんか?
これらの不安を解消してくれるのが、厚生労働省の「キャリアアップ助成金」です。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の従業員を正社員などに登用した企業、または非正規雇用の処遇改善に取り組む企業に対して、国が支給する助成制度です。その中でも「障害者正社員化コース」は、障害のある方の雇用促進と職場への定着を支援する企業に対して支給される助成金です。
助成金は活用してみたいと思っていても、「手続きが難しそう」「うちの会社も対象になるの?」と感じる方も多いですが、実際には中小企業でも利用しやすく、正しい準備をすればスムーズに申請できます。
この「障害者正社員化コース」は、支援内容が非常に手厚く、障害者の安定雇用や職場定着を進めたい企業にとって大きな助けとなる制度です。
この記事では、「障害者正社員化コース」の内容や支給額、申請の流れまで、初心者にもわかりやすく解説します。
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「障害者正社員化コース」とは?
「障害者正社員化コース」とは、以下のいずれかの措置を継続的に講じた場合、助成金を受けることができる制度です。
- 障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換
- 無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換
障害者の方が安定した職場で長く働けるよう支援することを目的としており、助成金を活用することで、企業は合理的配慮や正社員としての処遇改善を進めやすくなります。結果として、従業員のモチベーション向上や定着率アップ、ひいては戦力強化にもつながります。そして企業は、この制度を利用することで、障害者雇用率の達成や社会的信用の向上にもつなげることができます。
近年は、障害者雇用率の引き上げや人材不足の影響もあり、障害者の正社員化は多くの企業にとって重要なテーマになっています。この助成金を活用すれば、人材の定着や育成にかかるコストを抑えつつ、企業としての社会的責任を果たすことができます。
「障害者正社員化コース」の対象となる労働者の条件
キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす障害のある労働者です。
- 対象となる障害のある方であること(転換を行った日の時点)
身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された方 - 申請企業に6か月以上雇用されていること
正社員へ転換する前に、同じ事業主のもとで通算6か月以上働いていることが必要です。
(障害者トライアル雇用などを経て継続雇用される場合は、その期間を含めることも可能です。) - 就労継続支援A型事業の利用者ではないこと
- 正社員登用を前提に採用された人ではないこと
もともと「正社員として雇う予定」だった人を形式的に転換しても対象になりません。 - 過去3年以内に同一グループ会社などで正社員だった人ではないこと
転換前に、関連会社などで正社員・無期雇用だった場合は対象外となります。 - 事業主本人や取締役の親族(3親等以内)ではないこと
家族を登用したケースは助成対象外です。 - 定年まで1年以上あること
「障害者正社員化コース」の対象となる事業主
「障害者正社員化コース」の対象となるのは、障害のある有期雇用労働者を正社員または無期雇用労働者に転換した事業主です。つまり、実際に雇用形態を改善し、安定した雇用を提供している企業が支給の対象となります。
支給を受けるためには、転換後6か月以上継続して雇用し、賃金を支払っていることが必要です。また、雇用保険や社会保険への加入が適正に行われていることも条件に含まれます。
さらに、転換によって賃金を減額していないこと、労働者本人の同意を得ていることも求められます。これらは、企業が形式的な転換ではなく、実質的に安定雇用を実現しているかどうかを確認するための要件です。
キャリアアップ助成金の全コース共通要件として、事業主は雇用保険の適用事業所であること、キャリアアップ計画を作成し労働局に提出していることが必要です。
これらの条件を満たすことで、障害者の正社員登用を行う企業は、国から支援を受けながら安定雇用に向けた取り組みを進めることができます。
参考:厚生労働省HP キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) 「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(パンフレット)」 001471009.pdf
【中小企業向け】いくらもらえる?キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」の支給額
キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」は、障害のある方の長期的な職場定着を国が協力に支援する制度であり、中小企業にとっては非常に大きなメリットを得られます。ここでは令和7年度(2025年度)版の最新支給額をもとに、基本的な支給額の目安を紹介します。
<支給額の目安(令和7年度・中小企業の場合)>

- 上記は、支給対象者1人当たりの支給額です。
- 支給対象期間1年間のうち、最初の6か月を第1期、次の6か月を第2期といいます。
- 支給額には上限があり、各期に支払われた賃金総額を超える場合は、その賃金総額が上限となります。
参考:厚生労働省HP キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) 障害者雇用対策 |厚生労働省
初心者でも迷わないキャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」申請の流れ
キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」を利用するには、いくつかの手続きを正しい順序で行う必要があります。
「手続きが複雑そう…」と感じる方も多いですが、ポイントを押さえて準備すれば、初心者の方でもスムーズに申請できます。
ここでは、申請の基本的な流れを4つのステップをわかりやすく紹介します。
ステップ① キャリアアップ計画書の提出
最初のステップは、「キャリアアップ計画書」を所轄の労働局へ提出することです。この書類は、正社員転換を実施する日の前日までに必ず提出しなければなりません。提出が遅れると助成金の対象外になるため、最初に押さえるべき重要ポイントです。
ステップ② 正社員への転換
計画書を提出した後、対象となる障害のある有期契約社員を正社員として登用します。
転換後の雇用形態は、同じ事業所の正社員に適用されている就業規則が適用されることが必要です。また、「賞与または退職金の制度」および「昇給」が適用されていることが正社員としての要件となります。なお、試用期間を設ける場合は、その期間中は正社員化が完了したとはみなされません。助成金の対象外となる恐れがあるため、正社員登用時の契約内容には十分注意しましょう。
ステップ③ 6か月以上の継続雇用
転換後、6か月以上継続して雇用していることが条件です。この期間中に離職が発生すると、助成金が支給されない場合があるため注意しましょう。
ステップ④ 支給申請
正社員への転換後、6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内に、必要書類をそろえて労働局へ支給申請を行います。申請書類には、雇用契約書・賃金台帳・出勤簿などの添付が求められます。
第1期の支給を受けた後も、さらに6か月継続して雇用し、賃金支払いを行ったうえで第2期分の申請が可能です。
申請スケジュールについては、厚生労働省の「障害者正社員化コース」パンフレットに掲載されている支給申請期間の図解が参考になります。手続きのタイミングを誤らないよう、事前に確認しておくと安心です。
参考:厚生労働省HP キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) 「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(パンフレット)」 001471009.pdf
プロの社労士を活用するメリット
キャリアアップ助成金の申請には、制度知識と正確な書類作成が欠かせません。特に「計画書の提出タイミング」や「添付書類の整合性」でつまずくケースが多く、初歩的なミスで不支給になるケースも少なくありません。そのため、できれば最初のステップ(計画書提出前)から社労士に相談することをおすすめします。
社労士は、最新の制度情報を把握しており、企業の状況に合わせて最適な申請方法をアドバイスしてくれる心強い専門家です。
申請書類の作成・届出代行まで任せることも可能なため、経営者や人事担当者はコア業務に集中できます。「まずは自社で利用できるか確認したい」という段階でも、気軽に社労士へ相談してみましょう。
助成金・補助金に強い社労士・行政書士をお探しなら!
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キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」を活用するメリット
キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」は、単に非正規雇用を正規雇用に転換した対価として助成金を受け取る制度ではありません。この助成金を活用することは、企業の経営課題を解決し、組織を成長させるための戦略的な人材投資といえます。
障害者の定着率が向上する
非正規雇用から正規雇用への転換は、従業員にとって「雇用と生活の安定」に直結します。障害のある方が安定した雇用環境で働けるようになることで、働く意欲やモチベーションが高まり、長期的な就労につながります。
定着率が向上すれば、採用や教育にかかるコストを削減でき、結果として企業全体の生産性向上にも寄与します。
雇用コストの削減
障害のある方を雇用し、職場環境の整備や教育体制を整えるには、一定のコストがかかります。しかし、非正規雇用から正社員へ転換する際に一人あたり最大60万円の助成を受けられるため、環境整備にかかる初期投資や社会保険加入に伴う負担を大幅に抑えられます。
助成金を活用することで、企業は人材定着や職場環境改善にかかるコストを補いながら、安心して正社員登用を進めることができます。
企業の社会的評価とダイバーシティ推進につながる
障害者雇用を積極的に進める企業は、CSR(企業の社会的責任)の観点からも評価されやすく、自治体や大企業との取引面での信頼獲得にもつながります。
また、障害者雇用率制度への対応にとどまらず、「ダイバーシティ経営」を推進する姿勢を示すことで、企業イメージの向上や求職者からの好印象にもつながります。
このように「障害者正社員化コース」は、単なる資金調達の手段ではなく、「人材確保」「職場環境改善」「社会的信頼の向上」のすべてにおいて効果的に機能する制度です。助成金を上手に活用し、誰もが働きやすい職場づくりを進めることが、中小企業にとっての大きな成長の一歩となるでしょう。
まとめ
キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」は、単に非正規雇用の障害のある方を正社員へ転換するための助成金制度ではありません。企業にとっても、人材定着や組織強化につながる「持続可能な組織づくり」を支援する制度です。
障害のある従業員に対して、安心して働き続けられる環境や待遇を整えることで、従業員のモチベーション向上や企業全体の安定にもつながります。
また、助成金の活用は単なるコスト補助にとどまらず、「誰もが働ける職場づくり」を推進する社会的意義の高い取り組みでもあります。
障害者雇用を積極的に進める企業は、法令遵守やCSRの観点からも評価されやすく、取引先や求職者からの信頼向上にもつながります。
一方で、申請には一定の要件や手続きがあり、制度内容を正しく理解しておくことが重要です。初めて申請を検討する場合は、経験豊富な社労士に相談することで、スムーズかつ確実に申請を進めることができます。
障害者雇用の促進は、企業の成長と社会貢献の両立を実現する重要な取り組みです。キャリアアップ助成金を上手に活用し、すべての人が安心して働ける職場環境づくりを進めていきましょう。

