「優秀な人を正社員で採用したいけれど、社会保険料や給料の負担が重い…」
「正社員を増やしたいが、人件費が不安…」
「助成金があると聞いたけれど、正直よく分からない…」
このようなお悩みを抱えている中小企業の経営者様や人事担当者の方は、決して少なくありません。
確かに、正社員雇用には社会保険料の負担や給与の支払いなど、企業にとって大きなコストがかかります。しかし、その負担を国が支援してくれる制度があることをご存知でしょうか。
正社員雇用をサポートする制度として最も有名なのが「キャリアアップ助成金」です。しかし実は、正社員雇用に活用できる助成金は、キャリアアップ助成金だけではありません。
キャリアアップ助成金以外にも、企業の状況や採用方針に応じて活用できる助成金は複数存在します。これらの助成金を上手に活用することで、採用や人材育成にかかるコストを実質的に軽減し、無理のない形で正社員雇用を進めることが可能になります。本記事では、助成金に詳しくない方や、初めて助成金の活用を検討する方に向けて、正社員雇用に使える代表的な助成金を、できるだけ分かりやすく解説します。「知らなくて損をした」と後悔しないためにも、ぜひ最後までチェックしてください。
そもそも「助成金」とは?
助成金とは、国が企業の雇用維持や人材育成を支援するために支給する「返済不要のお金」です。一定の要件を満たしていれば、原則として受給できる点が大きな特徴です。
よく「補助金」や「融資」と混同されがちですが、その違いを整理すると以下のようになります。

助成金の多くは、大企業よりも中小企業の方が、支給額が手厚く設定されています。正社員の採用や転換、定着を後押しする制度が多く、人材確保に悩みやすい中小企業こそ活用しやすい仕組みといえます。財源は企業が支払っている「労働保険料」の一部であるため、正しく保険料を納めている企業であれば、これを使わない手はありません。
ただし、注意点もあります。助成金は、「正社員を雇ったら自動的にもらえる」というものではありません。多くの助成金では、採用や正社員転換の「前」に、計画書の届出や就業規則の整備が必要です。助成金を活用するためには、事前準備が非常に重要であることを押さえておきましょう。
王道!「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」を徹底解説
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の処遇改善や正社員化を支援する制度です。中でも「正社員化コース」は、正社員雇用を検討する企業にとって、最も代表的で活用されている助成金といえます。
正社員化コースの概要
パートやアルバイト、契約社員などの有期契約労働者を正社員に転換した場合に支給される助成金です。すでに働いている人材を正社員として登用できるため、採用コストを抑えながら人材の定着を図ることができます。
主な要件
正社員化コースを利用するためには、主に次のような要件を満たす必要があります。
- 正社員とは異なる雇用区分で6か月以上継続して雇用していること
- 正社員へ転換する制度を、就業規則などに明確に規定していること
- 転換前に「キャリアアップ計画」を作成し、労働局へ提出していること・転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させていること
支給額の目安
正社員化コースの支給額は、制度改正により見直しが行われています。令和7年度(2025年4月以降)からは、支給額の仕組みが整理され、原則として、有期雇用から正社員へ転換した場合の支給額は「40万円」となりました。
ただし、一定の条件に該当する「重点支援対象者」に該当する場合は、2期分(12か月)に分けて申請することができ、合計80万円の受給が可能となっています。

※「重点支援対象者」について
令和7年度から「重点支援対象者」として扱われ、2期目の申請も可能となるのは、次のいずれかに該当する従業員です。
- 雇い入れから3年以上の有期雇用労働者
- 雇い入れから3年未満で、かつ以下の両方に当てはまる有期雇用労働者
- 過去5年間の正社員期間が合計1年以下
- 過去1年間に正社員として雇用されていない
- 特定の派遣労働者、母子家庭の母、父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定訓練修了者
よくある勘違い
初心者の方が特につまずきやすいポイントです。
- 正社員にしてから準備すればよい
→【NG】必ず「転換する前」に計画書を提出し、受理されている必要があります。 - 就業規則はなくても申請できる
→【NG】助成金申請には「正社員への転換ルール」が明記された就業規則が必須です。
これを機に、会社のルールを整える必要があります。「後から何とかしよう」と思っても、要件を満たせず不支給となってしまうケースが非常に多いため、早めの準備が欠かせません。
(参考:厚生労働省HP「キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内」(リーフレット) 001598173.pdf)
キャリアアップ助成金以外にもある!正社員雇用に使える助成金6選
正社員雇用に使える助成金は、「キャリアアップ助成金」だけではありません。
実は、採用前・採用時・採用後(育成)など、企業の状況に応じて使える助成金が複数用意されています。ここでは、中小企業が検討しやすい代表的な助成金を、大きく3つに分けてご紹介します。
採用前・採用時に使える助成金(新しく人を雇用する際に使える助成金)
「採用の不安・コスト」を軽くしたい企業向けです。
①トライアル雇用助成金
- 特徴:「まずは試してから正社員にしたい」企業向け
- 内容:ハローワーク等の紹介により、求職者を原則3か月間、試行的に雇用した場合に支給される助成金です。実際の働きぶりを確認したうえで正社員登用を判断できるため、採用後のミスマッチ防止につながります。
- 受給額の目安:一定の要件を満たすことで、1人あたり月額最大4万円(最長3か月で合計12万円)
②特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
- 特徴:社会的意義のある採用を行いながら、経営面の負担も軽減したい企業向け
- 内容:高年齢者、障害者、母子家庭の母など、就職が特に困難とされる方を、ハローワーク等の紹介により正社員として雇い入れた場合に支給される助成金です。対象者を長期的に雇用することを前提とした制度で、採用時に使える助成金の中でも支給額が比較的大きい点が特徴です。
- 受給額の目安:対象者や企業規模により異なりますが、中小企業の場合、合計60万円~240万円(※支給対象期ごとに分割して支給)
③早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)
- 特徴:即戦力となる中途人材を、計画的・継続的に採用したい企業向け
- 内容:中途採用者の雇用管理制度(評価制度や賃金制度など)を整備したうえで、中途採用率を一定以上拡大した場合に支給される助成金です。単に中途採用を行うだけでなく、「中途採用を組織として定着させる体制づくり」が求められる点が特徴です。
- 受給額の目安:1事業所あたり50万円(※中途採用率を20ポイント以上上昇させた場合)
さらに、45歳以上の中途採用者割合を一定以上引き上げ、かつ賃金を前職より5%以上上昇させた場合には、最大100万円の支給対象となるケースもあります。(※採用状況や要件の充足状況により支給額は異なります。)
採用後・育成とセットで使える助成金(採用後の定着・育成をサポートする助成金)
「雇って終わり」にせず、戦力化したい企業向けの助成金です。
④人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
- 特徴:正社員に専門的なスキルを身につけさせたい企業向け
- 内容:正社員や有期契約労働者に対して、研修や教育訓練を実施した場合に、研修費用や研修期間中の賃金の一部が支給される助成金です。
- 受給額の目安:研修内容・時間・対象人数により異なりますが、経費助成→最大45%~75%、賃金助成→1時間あたり800円~
⑤キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
- 特徴:障害のある従業員の安定した雇用と処遇改善を目指す企業向け
- 内容:障害のあるパート・契約社員などを、正社員へ転換した場合に支給される助成金です。一般の正社員化コースとは別枠で設けられており、比較的手厚い支援が受けられる点が特徴です。
- 受給額の目安:1人あたり45万円~最大120万円(※重度障害者の場合など/支給対象期ごとに分割支給)
地域・事業拡大と連動する助成金(拠点新設や地方での事業拡大に連動する助成金)
事業成長と正社員雇用を同時に進めたい企業向けの助成金です。
⑥地域雇用開発助成金
- 特徴:地方での事業展開や拠点拡大を検討している企業向け
- 内容:雇用機会が不足している地域で、事業所の設置や増設を行い、正社員を雇い入れた場合に支給される助成金です。
- 受給の目安:48万円~最大1,600万円(※設置・整備費用や対象労働者の増加人数に応じて1年ごとに最大3回支給)
このように、正社員雇用に使える助成金は、「いつ採用するのか」「どんな人材を雇うのか」「雇用後どう育てるのか」によって、選ぶべき制度が大きく異なります。
ただし、助成金は制度ごとに事前手続きや申請期限が厳密に定められており、知らずに進めてしまうと受給できないケースも少なくありません。
次のセクションでは、助成金活用で初心者の方が特につまずきやすい注意点について詳しく解説します。
下記参照元一覧
- 厚生労働省HP トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
- 厚生労働省HP 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) |厚生労働省
- 厚生労働省HP 早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省
- 厚生労働省HP 早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省
- 厚生労働省HP 障害者雇用対策 |厚生労働省
- 厚生労働省HP 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)|厚生労働省
助成金を活用する際の注意点(初心者がつまずくポイント)
助成金は「返済不要」という大きなメリットがある反面、審査や手続きは非常に厳格です。
実際に助成金申請で多いのが、「制度自体は知っていたものの、手続きを誤ってしまい受給できなかった」というケースです。 助成金は、事前準備やルールを守らなければ、条件を満たしていても支給されません。ここでは、初心者の方が特につまずきやすい代表的な注意点を解説します。
①採用や正社員転換の「前」に計画届の提出が必要
多くの助成金では、採用や正社員転換などのアクションを行う「前」に、計画書や届出を提出することが必須となっています。
「もう採用してしまった」「すでに正社員に転換した」という場合、後から申請しようとしても対象外となるケースがほとんどです。助成金の活用を検討している場合は、必ず「アクションを起こす前」に要件を確認しましょう。
②就業規則・雇用契約書・賃金台帳などの書類の整合性
助成金の審査では、提出書類の内容が細かくチェックされます。
- 就業規則に定められている内容
- 雇用契約書に記載された手当が、実際には支払われていない
- 賃金台帳と出勤簿の記録に食い違いがある
このような不備や矛盾があると、不支給となる可能性があります。「実態として問題ない」だけでは足りず、書類上も正しく整っていることが重要です。
③提出期限の厳守・書類不備に要注意
助成金の申請期限は、非常にシビアです。「○日以内に報告」「○か月以内に申請」など、厳格な期限が設けられており、期限を1日でも過ぎてしまうと、理由を問わず受け付けてもらえません。
また、記入漏れや添付書類の不足など、書類不備が原因で不支給となるケースも少なくありません。
④「解雇」はNGになる可能性
多くの助成金では、申請前後の一定期間内に、会社都合による解雇(リストラ等)があると受給できないと定められています。
経営状況の悪化などを理由に、たとえ1人でも解雇を行ってしまうと、その期間に行う他の全ての助成金申請ができなくなる可能性があります。助成金を活用する場合は、雇用の安定が前提となる点を理解しておきましょう。
このように、助成金には細かなルールが多く、自己判断で進めると思わぬ落とし穴があります。少しでも不安を感じた場合は、早めに社会保険労務士(社労士)へ相談することが、失敗を防ぐ近道です。
社会保険労務士(社労士)に依頼するメリット
助成金制度は、毎年のようにルールが見直され、要件も非常に複雑です。そのため、自社だけで最新の情報を正確に把握し、ミスなく申請を行うことは、決して簡単ではありません。
実際に、「自分でやろうとしたけれど、専門用語が多くて途中で諦めてしまった」というご相談も少なくありません。
社労士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
- 最新情報の把握
頻繁に行われる制度改正や要件変更についても、常に最新の情報をもとに対応できます。 - 不支給のリスクを最小限に
複雑な書類作成や、行政とのやり取りを専門家が代行することで、「要件を満たしているのに受給できない」といった事態を防ぎます。 - 自社に合った助成金の提案
会社の現状や採用計画を丁寧にヒアリングし、状況に合った制度を選定します。本来受給できるはずの助成金を逃さないようサポートします。 - 本業に専念できる
膨大な事務作業から解放され、経営者様や人事担当者は、「採用した人材の育成」や「売上アップ」といった本来注力すべき業務に集中できます。
助成金は、「知っているかどうか」よりも、「正しいタイミングで、正しい手続きを行えるかどうか」で結果が大きく変わります。
「使えたはずの助成金を逃してしまった」という後悔をしないためにも、早い段階で社労士に相談することが、結果的に最も確実で、負担の少ない方法といえるでしょう。
まとめ
正社員雇用は、会社を成長させるための大切な「投資」です。そして、その投資を支えてくれるのが助成金制度です。 助成金は返済不要で活用できる、中小企業にとって非常に貴重な経営資源といえます。
キャリアアップ助成金はその代表例ですが、正社員雇用に活用できる助成金は他にも複数存在します。
重要なのは、「正しいタイミングで、正しい準備を行うこと」です。
- 早めに情報収集を行うこと
- 要件を理解し、事前準備をしっかり整えること
- 「自社で使える助成金は何か」を専門家に相談すること
助成金は、「知っているかどうか」だけでなく、「正しく準備できるかどうか」で結果に大きな差が生まれます。正社員雇用を検討している企業様は、使えたはずの助成金を逃さないためにも、ぜひ一度、社会保険労務士にご相談ください。

