「人手不足が解消しない」「優秀なパート・アルバイト社員に長く働いてほしいけれど、待遇改善の方法がわからない」
そんな人材に関する悩みを抱える中小企業は少なくありません。人材確保や定着を進めるには、待遇改善や教育体制の整備が重要ですが、すべてを自社の負担で行うのは簡単ではありません。
従業員の働きやすさを向上させながら、会社も成長するために活用できるのが「キャリアアップ助成金」です。キャリアアップ助成金は、パートや契約社員などの非正規雇用労働者を正社員にしたり、待遇を改善したりするなど、働き方の改善に取り組んだ企業に対して、国から助成金が支給される制度です。
本記事では、キャリアアップ助成金の全体像から、対象となる企業・従業員の条件、申請の流れまでを、はじめての方にも分かりやすく解説します。「うちの会社でももらえるのか?」が分かる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
キャリアアップ助成金とは? 目的と概要を解説
キャリアアップ助成金とは、パートや契約社員などの非正規雇用の従業員を、正社員に転換したり、スキルアップを支援したりした企業に対して、国が助成金を支給する助成制度です。
少子高齢化や人材不足が進む中、正社員と非正規雇用労働者との格差をなくし、働きやすい職場づくりや、安定した雇用を促進することが国の目的です。企業側にとっても、人材の定着や戦力化を図るための費用負担を軽減できる大きなメリットがあります。
キャリアアップ助成金にはいくつかの「コース」があり、それぞれ取り組み内容や要件が異なります。ここでは概要を表にまとめました。自社の取り組みに合うものがあるか、ぜひチェックしてみてください。

誰がもらえる?対象企業と従業員の要件
キャリアアップ助成金を受給するためには、企業側と従業員側の両方が一定の要件を満たす必要があります。要件を十分に理解していないと、「せっかく取り組んだのに対象外だった」というケースも少なくありません。申請前に必ず確認しましょう。
企業側の主な要件(全コース共通)
キャリアアップ助成金を受給するための、企業側に求められる要件は主に下記のとおりです。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を設置していること
- 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出していること
- 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明示できること
- キャリアアップ計画期間内に、計画に記載した正社員化・処遇改善の取り組みを実施していること
対象となる従業員の主な要件
助成金の対象となるのは、以下の要件を満たす有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者などです。
- 雇用期間の要件

- 取り組み以降の6か月間、当該対象適用事業所において雇用保険被保険者であること
- 事業主または取締役の三親等以内の親族ではないこと
- 支給申請日において離職していないこと
- その他、各コースで定められた労働者要件を満たしていること
こんな場合は対象外!
キャリアアップ助成金は条件を満たせば有効に活用できますが、ちょっとした要件の見落としや手続き不備で対象外になることもあります。
賃金引き上げ額が基準に届かない
コースにより賃金引き上げ率が異なります。事前に要件を確認し、基準を満たす必要があります。
労働関係法令違反がある
社会保険未加入、残業代未払い、労働保険料を未納などがある場合は、その時点で対象外です。
上記以外にも、コースごとの細かな要件があります。必ず最新情報を確認してください。
(参照:厚生労働省HP 「キャリアアップ助成金」パンフレット(令和7年度版) 001512871.pdf)
支給される金額と受給までの流れ
支給される金額の目安
キャリアアップ助成金の支給額は、コースの種類・取り組み内容・企業規模によって異なります。
ここでは、支給額の目安を図表でまとめました。「大体どのくらい支給されるのか」を知っておくことで、自社が取り組んだ場合の経済的メリットがイメージしやすくなります。

申請から受給までの流れ
キャリアアップ助成金は、受給までに複数のステップがあり、特に初めての申請ではやや複雑に感じられるかもしれません。
ここでは、「まず何から始めればいいのか」がひと目でわかるように、計画段階から受給までのプロセスをステップごとに整理しました。この流れを事前に押さえておき、申請漏れや期限切れといったトラブルを防ぎましょう。

よくある失敗例と審査に通るためのポイント
キャリアアップ助成金は魅力的な制度ですが、手続きの複雑さや要件の細かさから、申請が通らないケースも少なくありません。ここでは、申請でつまずきやすい「失敗例」と、審査をスムーズに通すための「成功のポイント」をまとめました。
キャリアアップ助成金の申請でよくある失敗例
提出書類の不備や不一致
賃金台帳や就業規則など、提出書類に記載漏れや矛盾があると、審査で不支給となる可能性があります。
キャリアアップ計画書と実行内容の食い違い
事前に提出したキャリアアップ計画書の内容と、実際の取り組みが異なる場合は、助成金が支給されません。
最新情報を確認していない
助成金制度は毎年見直しがあります。古い情報のまま手続きを進めてしまうと、要件を満たせず不支給になることがあります。
キャリアアップ助成金申請を成功させるポイント
必要書類を事前にチェック
提出が必要な書類や記載項目を早めに確認し、漏れや不一致を防ぎます。
記録をしっかり残す
賃金台帳、労働条件通知書、就業規則の改定履歴など、取り組みを裏付ける資料を整えておきましょう。
専門家に相談する
社労士は、助成金の最新情報を把握しており、複雑な手続きや最適なコース選定もサポート可能です。特に初めて申請する場合は、申請準備から受給までをトータルで任せることで、失敗のリスクを大幅に減らせます。
まとめ
本記事では、キャリアアップ助成金の概要から、対象となる企業・従業員の要件、そして受給までの流れについて解説しました。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用から正社員への転換や賃金アップなどを通じて、従業員の定着率や生産性を向上させることができる、中小企業にとって魅力的な制度です。自社の負担を抑えつつ、職場環境や制度改善を進められる大きなチャンスでもあります。
ただし、制度には細かい要件や手続きがあり、準備不足や情報の見落としによって不支給となるケースもあります。令和7年度も制度の一部が見直されていますので、最新情報の確認は欠かせません。
「うちの会社は助成金の対象になるのか知りたい」「手続きが複雑で不安」という場合は、早めに社労士へ相談するのがおすすめです。専門家のサポートを受けることで、申請の確実性が高まり、受給までスムーズに進められます。