近年、子育てと仕事の両立を支援する制度が注目される中で、「半育休」という言葉を耳にした担当者の方も多いかと思います。特に、育児休業を取得しながらも一部業務に関わりたいと考える従業員にとって、この「半育休」は重要な選択肢となりつつあります。
本記事では、人事担当者の皆さまに向けて、半育休の概要や条件、在宅勤務との関係、さらには企業と従業員双方にとってのメリットについて解説します。
半育休とは?育休と何が違う?
「半育休」とは、育児休業中の従業員が、育児休業給付金を受け取りながらも、一定の条件のもとで就業し、収入を得る働き方を指します。一般的な「育休」が完全に就労を停止するのに対し、「半育休」では一定の範囲内で働くという点が大きな違いです。
ただし、「半育休」という言葉は法律上の正式な用語ではなく、実務上や社会慣習の中で使われている表現です。法制度としては、あくまで「育児休業」であり、その期間中に一時的・臨時的に就業するケースが「半育休」と呼ばれています。
この仕組みにより、従業員は育児と仕事の両立を柔軟に図ることができるようになり、休業中の収入減少をある程度補えるだけでなく、キャリアを維持しやすくなるというメリットもあります。
半育休の条件
半育休を実施するには、育児休業給付金の支給要件を満たしたうえで、一定の範囲での就業にとどめる必要があります。具体的には、以下の条件が求められます。
まず、育児休業給付金の受給要件として、
- 1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した、雇用保険の被保険者であること
- 育休開始前2年間に、11日以上就業した月が12ヶ月以上あること(または、80時間以上働いた月が12ヶ月以上)
- 育休期間中、1ヶ月あたりの就業日数が10日以下、または就業時間が80時間以下であること
さらに重要なのは、育児休業という制度は育児のために就労義務を消滅させる制度であって、育児休業期間中に働くことを本来予定していないという点です。そのため、半育休における就業は「一時的」「臨時的」でなければなりません。あらかじめ定期的に働くことを予定していた場合、それは育児休業とは認められず、給付金の支給対象外となる可能性があります。
在宅勤務やテレワークは対象?
育児休業中に、在宅勤務やテレワークをすることも「半育休」に該当する可能性がありますが、その可否は勤務の内容と性質に依存します。
育児休業中の就業は、あくまで「一時的・臨時的」である必要があります。たとえば、育休開始当初から1日4時間、月20時間の在宅勤務を定期的に行うといったケースでは、それは継続的な就労とみなされ、育児休業とは認められません。したがって、このようなケースでは育児休業給付金は支給されず、「半育休」を実施することはできません。
一方で、突発的なトラブル対応など、やむを得ない理由で事業主と従業員が合意し、一時的にテレワークで就業するような場合であれば、「一時的・臨時的」と判断され、「半育休」として認められる可能性が高いといえます。人事担当者としては、業務内容とその必要性を明確にし、従業員と慎重に合意形成を図ることが重要です。
半育休のメリット
半育休は、従業員だけでなく会社にとってもメリットがあります。
育休中の収入増加
育児休業中の課題の一つに、「収入の減少」があります。育児休業給付金は、休業開始時賃金の67%(6ヶ月経過後は50%)が支給されますが、生活費を賄うには不十分と感じるケースも少なくありません。
半育休を活用すれば、給付金に加えて就業に対する賃金も得られるため、収入減を抑えることができます。ただし、給付金は賃金と合わせて80%を超えないように調整されるため、支払われた賃金が多い場合は給付金が減額される点には注意が必要です。
育休復帰のハードルが下がる
育児休業から復帰した従業員の多くが、ブランクによるキャリア不安や、職場の変化への戸惑いを経験します。こうした「育休復帰の壁」は、企業にとっても従業員の定着やモチベーション維持に影響を及ぼす大きな課題です。
半育休であれば、休業中に一部業務に関わることができるため、職場との接点を保ちながらスムーズな復帰に向けた準備が可能になります。これは従業員にとっての心理的な安心感に繋がるだけでなく、企業側としても雇用の安定や人材の流出防止といったメリットがあります。
まとめ
半育休は、育児と仕事のバランスを取りながら、柔軟な働き方を可能にする制度です。法令上の正式な制度ではないものの、育児休業給付金の要件を満たしつつ一時的・臨時的な就業を行うことで、育休中の収入補填やキャリアの維持に役立つ仕組みといえます。
とくに在宅勤務やテレワークとの関係では、「一時的・臨時的」という要件を満たすことが重要です。人事担当者としては、従業員の事情をふまえつつ、就業形態や業務の内容を慎重に確認し、制度の適切な運用を行うことが求められます。
半育休は、企業と従業員の双方にとって大きな可能性を秘めた選択肢です。働き方の多様化が進む中で、このような柔軟な制度を正しく理解し、実務に活かしていくことが、これからの人事戦略においてますます重要になっていくでしょう。