
「人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド」の第17回です。
福利厚生を、人材戦略を支える施策と位置づけ、経営の視点から福利厚生を見直し活用しようという連載です。



私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社、
株式会社労務研究所の代表取締役、可児俊信です。



私がお相手をつとめますサトです。
今日もよろしくお願いいたします。



前回まで、様々な福利厚生制度をご紹介しました。



大変勉強になりました!
ただ、充実させるとなるとやっぱり費用面が心配になっちゃいます。



確かにコストはかかりますが、
そのコストは「投資」と言い換えることもできます。



今回は福利厚生を「人的資本経営」と絡めてお話します。
「人的資本経営」と「福利厚生」の関係性



まずは「人的資本経営」と福利厚生の関係からですね。



そもそも人的資本経営って、ここ数年急に言われ始めたのはなぜですか?
現在、急増しているIT等新しい産業では、ヒトが一番重要でヒトこそが利益を生むという考え方が増えています。大きな機械で大量生産していた時代から、大きく変化しました。だから資源ではなく資本といわれます。人的資本とは英語ではヒューマンキャピタル。資本ということは、社員は利益を生む元ですね。



よく使われる言葉で、ヒト、モノ、カネを経営資源といいますよね。



経営資源の中では、ヒトは、モノ、カネと同じ位置づけです。
例えば、工場では社員だけでは製品は作れません。製品を作る設備が必要です。原材料を仕入るお金も必要です。でもサービス業やIT等は社員がいてPCさえあれば利益を生めます。設備とかお金よりもヒトが一番重要だということです。
ですが、「ヒトが大事」というのは昔から変わりません。投資家が今頃気づいたわけです。社員が利益を生むなら社員を重視して社員に投資している会社は将来成長するはず。それが人的資本項目の開示です。
福利厚生の位置づけ
福利厚生もこのタイミングで投資と位置づけましょう。社員のやる気を出させ、さらに働きやすい職場環境をつくるのが福利厚生です。つまり、社員にお金をかけることによって会社の利益を増やすので、福利厚生は社員への投資になります。



投資って、元のお金を増やすことですよね。



だったら、福利厚生は人財の価値を引き上げる手段といえます。
福利厚生は人財への投資手段
福利厚生は人財への投資手段という言い方が正確です。福利厚生が投資なら、人財が投資によってどの程度価値が向上したかという人財の投資利回りを測定しないといけません。一番望ましいのは社員が将来生み出す会社利益を金額で表示してそれを投資家に開示することです。
例えば、Aさんは退職までに20億円の利益を生み出すといった数値です。でも経営環境は常に変化するので、Aさんが本当に20億円の利益を生むとは言い切れません。だから、会社が社員に投資している様子を数値化するのが、今の開示ルールです。



こんなにお金をかけているから
将来利益が生まれますと期待させる訳ですね。
福利厚生は企業価値の向上につながる?
こうした背景で、人的資本項目の開示が2023年度から始まったわけですが、これからの発展と充実が期待されます。人財戦略の最終目的は企業価値の向上です。企業価値は企業の社会的な役割を高めることですが、投資家の視点では時価総額の最大化でしょう。
では、福利厚生という手段が企業価値の向上という目的にどう繋がるのかを説明します。福利厚生を実施すると社員の満足度が高まります。そして社員と会社の信頼関係が深まりエンゲージメントも向上します。そうなると、社員の定着に繋がり、人材が確保できます。人材の流失による、売り上げ利益の損失や教育コストがかからないため会社の売上利益の増加が期待できます。
一方、福利厚生で健康経営、ダイバーシティ経営を進めることで、一人当たりの生産性、つまり人財の価値が高まります。そうなると当然、労働生産性も上がります。最終的に企業価値の向上につながります。



いままでは福利厚生の目的がたくさんあると思ってましたが、
それぞれが関連しているんですね。


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発行:株式会社労務研究所
株式会社労務研究所では、福利厚生に関する実務誌「旬刊福利厚生」を毎月2回刊行しています。
福利厚生施策の実態調査、事例紹介、動向の解説および重要な関係情報を分かりやすく編集した実務誌です。


株式会社労務研究所 代表取締役
~福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
可児 俊信 氏
公式HP:https://rouken.com
ご相談・お問合せはこちらから
1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングにかかわる。年間延べ700団体を訪問し、現状把握と実例収集に努め、福利厚生と企業年金の見直し提案を行う。著書、寄稿、講演多数。
◎略歴
1983年 東京大学卒業
1983年 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険)
1988年 エクイタブル生命(米国ニューヨーク州)
1991年 明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田生活福祉研究所)
2005年 千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授 現在に至る
2006年 ㈱ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長 現在に至る
2018年 ㈱労務研究所 代表取締役 現在に至る
◎著書
「新しい!日本の福利厚生」労務研究所(2019年)、「実践!福利厚生改革」日本法令(2018年)、「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」日本法令(2016年)、「共済会の実践的グランドデザイン」労務研究所(2016年)、「実学としてのパーソナルファイナンス」(共著)中央経済社(2013年)、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」労務研究所(2011年)、「保険進化と保険事業」(共著)慶應義塾大学出版会(2006年)、「あなたのマネープランニング」(共著)ダイヤモンド社(1994年)、「賢い女はこう生きる」(共著)ダイヤモンド社(1993年)、「元気の出る生活設計」(共著)ダイヤモンド社(1991年)