近年、雇用仲介アプリを利用して短時間・単発で働く「スポットワーク」が広まりつつあります。スポットワークは、労働者が自身の都合に合わせて柔軟に働くことができるだけでなく、事業主にとっても一時的な人手不足に迅速に対応できるという利点があります。
一方で、賃金未払い、求人内容と実際の労働条件の不一致(業務内容・賃金など)といったトラブルの相談が労働基準監督署などに寄せられています。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省はスポットワークにおける労務管理の注意点をまとめたリーフレットを公表しました。この記事では、リーフレットで示された主なポイントについて、人事担当者の皆さま向けに解説します。
(参考:厚生労働省リーフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512297.pdf))
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スポットワーカーが応募した時点で労働契約が成立
スポットワークでは、アプリ上で求人と応募が即時マッチングされることが一般的であり、面接などを経ることなく就労が決定するケースが多く見られます。
この点について厚労省は、「別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立する」との見解を示しています。これは労働契約法第6条に基づくものであり、労働者が労務を提供し、使用者が賃金を支払う合意があれば契約が成立するとされています。
労働契約が成立した場合、労働基準法や労働安全衛生法など、各種労働関係法令が適用されることに注意が必要です。また、労働契約が成立した場合、就労開始までに労働条件通知書等によって賃金・労働時間・業務内容等の労働条件を明示することが法的に義務付けられています。これを怠ると労働基準法違反となり、罰則が適用されるおそれがあります。
労働契約成立後の解約(いわゆる「キャンセル」)はスポットワーカーへの配慮が必要
労働契約が成立した後に事業主の都合で直前にキャンセルを行うことは、スポットワーカーにとって就労準備が無駄になるだけでなく、その日の他の就労機会を確保する時間的余裕も失わせるおそれがあり、労働者保護の点から不適切とされます。
そのため、あらかじめキャンセル事由や期限を定めた「解約権留保付き労働契約」を労使間で締結する場合であっても、その内容がスポットワーカーに一方的に不利益とならないよう十分に配慮する必要があります。
また、一度確定した労働日や労働時間等を変更する場合には、それは労働条件の変更に該当するため、事業主とスポットワーカーの双方による合意が必要であることにも注意が必要です。
会社都合による休業には休業手当が必要
労働契約が成立したにもかかわらず、会社側の都合でスポットワーカーを休業させたり、予定よりも早く業務を終了させたりした場合には、会社は労働基準法第26条に基づき「休業手当」を支払う義務が生じます。
この休業手当は、1日あたりの平均賃金の60%以上と定められています。たとえば、早上がりによって支払う賃金が平均賃金の60%を下回る場合は、その差額を補填する形で支払いを行う必要があります。
なお、その日の予定された賃金を全額支払う場合には、休業手当を支払う必要はありません。
業務の準備行為も労働時間に含まれる
事業主の指示により、スポットワーカーが指定された制服への着替えや業務終了後の清掃など、業務に付随する準備・片付け行為を就業先内で行った場合、特段の事情がない限り、それらの行為も労働時間として扱われます。労働時間の把握は事業主の責務であり、労働時間に該当する場合には、適切な賃金を支払う必要があります。
厚生労働省のリーフレットでは、これらの準備・片付けの時間を含めたうえで、始業・終業時刻を求人時に明確に設定するよう、事業主に対して求めています。
また、就業前や業務の合間に事業主の指示で待機を命じられた場合、その時間も労働時間として扱われます。待機後の業務の有無にかかわらず、事業主は当該時間に対する賃金を支払う義務があります。
まとめ
スポットワークは、柔軟な雇用形態として今後も普及が進むと見込まれますが、それに伴って労務管理のリスクも高まっています。厚労省が公表したリーフレットでは、労働契約の成立時期、休業手当の支払い、労働時間の定義など、スポットワーク特有の注意点が明確に整理されています。
担当者の皆さまは、スポットワーカーの雇用に際し、アプリを介したマッチングであっても通常の労働契約と同様の管理義務が生じることを認識し、労働条件の明示や賃金の適正な支払いを徹底することが求められます。
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