
「人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド」の第20回です。
福利厚生を、人材戦略を支える施策と位置づけ、経営の視点から福利厚生を見直し活用しようという連載です。



私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社、
株式会社労務研究所の代表取締役、可児俊信です。



私がお相手をつとめますサトです。
今日もよろしくお願いいたします。



サトさんは、現在勤務している会社のどこを見て
「入社したい」と思いましたか?



土日祝休みで、ボーナスがあって、
それから休暇制度が充実していたりだとか……



あ!あとは資格取得を支援してくれる制度に魅力を感じました!



いいですね。職種で選択するのはもちろんですが、
いかに働きやすい職場かどうかも重要ですよね。



サトさんのように、近年、若手の社員ほど
福利厚生制度を重視している傾向にあることはご存じでしょうか?
福利厚生で就職する会社を選択



実際に企業で働いている方に対し、下記の調査を行いました。


学生は、福利厚生を重視して勤務先・就職先を決めています。20代社員では3人に2人がそう回答しています。30代でも2人に1人以上です。会社が想像している以上に、学生は福利厚生を重視して会社を選択しているということです。
そのため、会社が先回りして、福利厚生の説明をするのがよいです。ただし、その際に制度を列挙するだけではあまり意味がありません。学生は福利厚生制度自体に詳しくないからです。この会社の福利厚生を使うと、自分の会社生活やワークライフバランスはゆとりができて、そして充実した生活ができると想像できるのがよいです。会社の福利厚生の助けを借りて、育児・子育てと仕事が回っているとか。仕事とプライベートがゆとりを持って両立できているとか。



採用側は、福利厚生のサイトや説明を
もっと詳しくしたほうがいいですね。



そもそもですが、
今、学生が福利厚生を重視しているのは何故ですか?
福利厚生は、学生にとって良い会社であるというシグナルなんです。シグナルとは、物事の善し悪しを一目で判別できる目印です。福利厚生が充実している会社なら、社員のことまでコストをかける余裕とゆとりがある会社、ということです。福利厚生のいい会社は安心して働けるとみなされます。
これまでは、大企業と言うだけで良い会社というイメージでしたが、今は福利厚生が目安になっています。
長期的に働くための福利厚生


図表2では、8割近くの方が会社に長く勤めるには福利厚生が重要だと考えています。
会社のサポートがないと、人生のライフイベントに対応できません。家を買うとか、家族が病気になるとか、裁判に巻き込まれるとか、自分だけではどうにもならないことが起きるのです。困ったときに会社が助けてくれる。
この安心感は、この会社で頑張ろうというエンゲージメントに繋がります。
会社と社員の信頼関係がないと長期勤続は実現できません。それに、賃金よりも福利厚生の方が、安定性があります。
賃上げが難しい場合の代替策


図表3の調査では、賃上げが無理なら福利厚生を充実して欲しいと思うか、調査を行った結果です。半数以上が拡充してほしいと思っており、特に若手社員では6割以上が福利厚生を充実して欲しいと言ってます。
福利厚生を活用する方が経済的メリットは大きいです。現金は現金以上の価値はありません。でも、福利厚生は社員が活用すれば、いくらでも無限に価値が広がります。1000円は千円の補助ですが、福利厚生は制限なく利用できるので、福利厚生は活用次第ということです。



確かに、自社で賃上げは期待できないという社員は多いです。
毎年給料をアップできるのは、一部の企業です。「だったら福利厚生に振り切ろう」という方向性はありです。賃上げでは大手に勝てなくても、福利厚生なら大手に勝てます。なぜなら、福利厚生費は大手企業でも月額で25,000円が平均です。



平均から1万円増やして35,000円にすればどうなりますか?



大企業を上回れます!



自信をもって、「当社は福利厚生では負けません」と言えます。



学生はよい企業のシグナルとして福利厚生をみています。
会社も福利厚生に思い切って振り切ってみましょう。


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発行:株式会社労務研究所
株式会社労務研究所では、福利厚生に関する実務誌「旬刊福利厚生」を毎月2回刊行しています。
福利厚生施策の実態調査、事例紹介、動向の解説および重要な関係情報を分かりやすく編集した実務誌です。


株式会社労務研究所 代表取締役
~福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
可児 俊信 氏
公式HP:https://rouken.com
ご相談・お問合せはこちらから
1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングにかかわる。年間延べ700団体を訪問し、現状把握と実例収集に努め、福利厚生と企業年金の見直し提案を行う。著書、寄稿、講演多数。
◎略歴
1983年 東京大学卒業
1983年 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険)
1988年 エクイタブル生命(米国ニューヨーク州)
1991年 明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田生活福祉研究所)
2005年 千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授 現在に至る
2006年 ㈱ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長 現在に至る
2018年 ㈱労務研究所 代表取締役 現在に至る
◎著書
「新しい!日本の福利厚生」労務研究所(2019年)、「実践!福利厚生改革」日本法令(2018年)、「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」日本法令(2016年)、「共済会の実践的グランドデザイン」労務研究所(2016年)、「実学としてのパーソナルファイナンス」(共著)中央経済社(2013年)、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」労務研究所(2011年)、「保険進化と保険事業」(共著)慶應義塾大学出版会(2006年)、「あなたのマネープランニング」(共著)ダイヤモンド社(1994年)、「賢い女はこう生きる」(共著)ダイヤモンド社(1993年)、「元気の出る生活設計」(共著)ダイヤモンド社(1991年)