同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案を公表(厚労省)

厚生労働省は2025年11月、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案をウェブ上に公表しました。短時間・有期雇用労働者および派遣労働者と、いわゆる正社員との間の待遇差について、どのような差が不合理と評価され得るのかを示す内容を、近年の最高裁・高裁判決を踏まえて整理し直したものです。

(厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)」https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001598238.pdf

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今回の見直し案では、これまでのガイドライン上では考え方が十分に示されていなかった待遇について、新たな整理が行われました。主な対象は、家族手当、住宅手当、退職手当、夏季・冬季休暇、無事故手当、褒賞の6つで、このうち家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇については、具体的な「問題となる例」「問題とならない例」まで示されています。

家族手当については、「労働契約の更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれる」短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならないとされました。一方、契約更新を繰り返しておらず、継続的な勤務が見込めない有期雇用労働者等に対して家族手当を支給しないことは、問題とならない例とされています。形式的な有期・無期の区分ではなく、実質的な継続雇用の見込みが重視される内容となっています。

住宅手当についても、通常の労働者と同様に転居を伴う配置変更があり得る有期雇用労働者については、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならないとされています。問題とならない例として、転居を伴う配置変更が見込まれる通常の労働者にのみ住宅手当を支給し、配置変更が見込まれない有期雇用労働者には支給しないケースが挙げられています。ただし、名目上は「転居を伴う配置変更が見込まれる」ことを理由に通常の労働者にのみ住宅手当を支給しながら、実際には転居を伴う配置変更を行っていない場合は、「問題となる例」に該当するとされており、運用実態の整合性が強く問われる内容になっています。

退職手当(退職金)については、その性質・目的を「労務の対価の後払い」「功労報償」など複合的なものとしたうえで、短時間・有期雇用労働者にも同様の目的が妥当するにもかかわらず、職務内容や配置の範囲の違いに見合う退職手当を支給せず、代替的な基本給の上乗せなども行っていない場合には、不合理な待遇差と判断され得るとされています。

同様の考え方は、夏季・冬季休暇、無事故手当、褒賞についても示されているほか、派遣労働者についても、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇をどのように確保すべきかという観点から、指針の見直しが行われています。

現時点ではまだ「案」の段階であり、最終的な改正内容や施行時期は今後決まっていく見込みですが、人事・労務担当者としては、早めに自社の規程や運用を整理しておくことが望ましいといえます。家族手当や住宅手当、退職手当など、各種制度について、短時間・有期雇用労働者や派遣労働者と正社員の間にどのような差があるのか、その差を職務内容や配置の範囲、成果や責任の違いで説明できるのかを確認しておくことが重要です。

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