令和7年8月7日、厚生労働省は、令和6年に労働基準監督署が行った賃金不払事案に関する監督指導結果を公表しました。その内容によると、賃金不払事案は全国で22,354件発生し、前年より1,005件増加しました。
今回、対象となった労働者は18万5,197人で、賃金不払いの総額は172億1,113万円でした。金額ベースでは前年より70億円以上増加しています。
このうち、令和6年中に監督署の指導により解決に至ったものは21,495件(96.2%)で、支払われた金額は162億732万円(94.2%)でした。大部分は解決していますが、未解決のままのケースも存在します。
SATO社労士法人の無料メルマガ
- 面倒な情報収集は不要!
- 最新の法改正や労務管理ノウハウをわかりやすくお届け
- 経営者・人事担当者が今すぐ押さえるべき実務対応
業種別では商業が最多
業種別では、商業が最も多く全体の2割を占める4,494件、次いで製造業(4,297件)、保健衛生業(3,416件)、接客娯楽業(2,832件)、建設業(2,213件)と続きます。これらの業種では労務管理の課題、特に時間外労働の取り扱いが問題となるケースが目立ちます。
具体的な違反事例
具体的な違反事例としては、職能手当など割増賃金の算定基礎に含めるべき賃金を除外して計算していたケースや、始業前の清掃作業を指示していたにもかかわらず、その分の割増賃金を支払わなかったケース、タイムカードで勤務時間を把握しつつ残業代の支払いを自己申告制にしていたケースなどが確認されました。
さらに悪質な例として、定期賃金の全額を所定の支払日に支払わなかった事案があり、是正勧告にも応じなかったため書類送検に至ったケースが報告されています。この事案では60名の労働者に対し、約2,550万円の未払いが2か月間発生していました。
まとめ
労基署の監督は、申告があってから動く場合だけでなく、定期的な調査や通報に基づいて行われます。不払いは意図的でなくとも、制度設計や運用の不備から生じることがあります。
人事部門としては、自社の労務管理の現状を精査し、法令に基づいた確実な対応を行うことで、未払い発生のリスクを未然に防ぐことが従業です。
SATO社労士法人の無料メルマガ
- 面倒な情報収集は不要!
- 最新の法改正や労務管理ノウハウをわかりやすくお届け
- 経営者・人事担当者が今すぐ押さえるべき実務対応