厚生労働省は11月17日、「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」をHPで公表しました。2025年6月の労働施策総合推進法(労総法)改正により、いわゆる「カスハラ防止措置の義務化」が盛り込まれており、今回の素案はその具体的な中身を示したものです。
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素案では、事業主が講じなければならない具体的な措置として、主に次の4つのポイントが記載されています。
1つ目は「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」です。事業主は、カスハラには毅然と対応し労働者を保護する方針を明確にし、管理監督者を含む全ての労働者に周知することが求められます。社内報やイントラネット、マニュアル、研修などを通じて方針や対応ルールを共有すること等が例示されています。
2つ目は「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」です。労働者からの相談に適切かつ柔軟に対応できるよう、相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が内容に応じて関係部門と連携できる仕組みやマニュアル、研修などを整備することが示されています。被害を受けた労働者が委縮する可能性も考慮し、相談対象は、明らかなカスハラだけでなく、「カスハラかどうか判断が微妙なケース」についても、広く受け止めるべきとされています。
3つ目は「職場におけるカスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」です。相談があった場合、事業主は事実関係を迅速かつ正確に確認し、そのうえで被害者への配慮措置や再発防止策を講じる必要があります。被害者と行為者を引き離す、メンタルヘルス面での相談対応を行う、必要に応じて警察へ通報したり弁護士に相談したりすることなどが例として示されています。結果としてカスハラが認定されなかった場合でも、方針・ルールの再周知や職場環境の改善を通じて再発防止を図ることが望ましいとされています。
4つ目は「職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置」です。事業主は、過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられる行為に対する対処方針をあらかじめ定め、周知したうえで、その方針に基づき対応できる体制を整えることが必要です。具体例としては、警察への通報、警告文の発出、法令の範囲内でのサービス提供拒否や出入り禁止、仮処分命令の申立てなどが挙げられています。
また、これらの措置とあわせて、相談者のプライバシー保護や、カスハラに関する相談や調停申請等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止も、就業規則や社内ルールに明示し、周知する必要があるとされています。特に、性的指向・ジェンダーアイデンティティなど機微な個人情報を含む事項については慎重な取扱いが求められます。
改正労働施策総合推進法に基づくカスハラ防止措置義務の施行期日については、労働政策審議会で「令和8年(2026年)10月1日」とする案が提示されており、今後、政令で正式に定められる見込みです。
今回の指針素案は、企業の人事・労務担当者様にとって、求められる具体的な措置がより明確になったことで、就業規則、ハラスメント規程、顧客対応マニュアル、研修体系などを整理・見直しをすすめるうえで重要な参考資料となりそうです。
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