副業先の労働時間、会社が知らなければ割増賃金不要【東京地裁判決】

副業・兼業を行っていたと主張する労働者が、時間外労働の割増賃金などを求めた裁判で、東京地方裁判所(令和7年3月27日判決)は、会社側の対応を認め、労働者の請求を棄却しました。裁判所は、複数の事業主の下で働いた場合であっても、「会社が他社での労働時間を知らなかったときには、労基法38条1項に基づく割増賃金の支払義務は負わない」としています。

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被告会社(Y社)は、スマホアプリを通じて、短時間の仕事をしたい人と人手を求める事業者(A社)をマッチングするサービスを提供していました。利用規約上は、A社の賃金支払債務をY社が併存的に引き受け、Y社が労働者に賃金を支払う仕組みでした。

原告である労働者は、このサービスを利用し、令和5年7月19日に東京都内のA社で1時間15分勤務しました。賃金は1340円でしたが、支払方法として定められていた銀行口座の登録を行わず、Y社からの複数回の登録依頼にも応じませんでした。このため、Y社は賃金を法務局に供託しました(裁判所は当該供託を有効と判断しています)。

しかし、労働者は「この勤務の前に別の事業主であるB整骨院の業務に長時間従事していた」と主張しました。具体的には、7月17日午前5時から19日午前9時までのうち合計43時間、B整骨院の従業員の勤怠整理などの仕事をしており、その後のA社での勤務は法定時間外労働に当たるとして、時間外割増分335円などの支払いを求めました。

これに対して裁判所は、「勤務表の記載が、ほとんど休息がない長時間勤務となっており不自然であること」や、「鹿児島市内の自宅でB整骨院の仕事をしたとする主張と、東京都内での勤務との間で、移動時間を考えると時間的に成り立たない日があること」等から、B整骨院での就労自体を認めませんでした。

また、裁判所は、労基法38条1項について、労働者が複数の事業主の下で働き、その労働時間を通算すると法定労働時間を超える場合、時間的に後に労働契約を結んだ事業主が、超えた時間数について割増賃金を支払うとしつつも、「通算すると労基法32条所定の労働時間を超えることを当該事業主が知らなかったときには…割増賃金の支払い義務を負わない」と判断し、割増賃金の請求を退けています。

担当者としては、この判決により、今後の法改正やガイドラインの動向を注視しつつ、副業・兼業を行う従業員の健康や長時間労働の実態を、どのような仕組みで把握していくか検討していくことが重要になってくると考えられます。

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