厚労省で最長労働時間規制などについて議論が行われています

厚生労働省は9月11日、労働基準関係法制研究会第13回の資料を公表しました。労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇に関する規制について、さまざまな観点から議論が行われています。この記事では、研究会で取り上げられた主要なトピックについて、企業の経営者や人事担当者の皆様に影響のある点を中心にまとめていきます。

（参考元「厚生労働省HP」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43475.html）

最長労働時間規制について

時間外・休日労働時間の上限規制

働き方改革関連法で導入された時間外・休日労働時間の上限規制については、一定の効果が見られているものの、さらなる見直しの可能性が議論されています。

• 長期的には、時間外労働の上限（年720時間・月100時間未満・複数月平均80時間）を36協定の原則的上限である月45時間、年360時間に近づけていく方向性が示されています。
• 自動車運転者や医師など、一般則より長い上限が適用される業種についても、健康確保措置のあり方や一般則適用に向けた取り組みが議論されています。

企業としては、将来的な上限規制の強化を見据えて、業務プロセスの見直しや人員配置の最適化を検討する必要があるかもしれません。

労働時間の意義等

労働時間規制の意義について、健康確保だけでなく、仕事と生活の両立やキャリアアップの観点からも議論が行われています。

• 労働者のライフステージに合わせたワークライフバランスを考慮した制度設計の重要性が指摘されています。
• 一方で、仕事と生活の両立は多様であり、外部からの介入の是非についても議論されています。

企業としては、労働者の多様なニーズに対応しつつ、健康確保と生産性向上の両立を図る働き方改革の推進が求められるでしょう。

裁量労働制・高度プロフェッショナル制度・管理監督者等

これらの制度については、健康・福祉確保措置の強化や要件の明確化が議論されています。

• 管理監督者等について、適用要件をより明確化することや、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度のような健康・福祉確保措置の導入が検討されています。
• 各制度の健康・福祉確保措置をわかりやすく揃えていくことや、より効果的な措置となるよう検討が行われています。

企業としては、これらの制度を利用する際に、より厳格な健康管理や労働時間の把握が求められる可能性があります。

テレワーク等の柔軟な働き方

テレワークの普及に伴い、より実態に合わせた労働時間管理の在り方が議論されています。

• フレックスタイム制やみなし労働時間制など、緩やかな時間管理の下でのテレワーク実施が検討されています。
• 一方で、テレワーク下での長時間労働の問題にも留意が必要とされています。

企業としては、テレワーク特有の事情を考慮しつつ、適切な労働時間管理と健康確保の両立を図る必要があります。

法定労働時間週44時間の特例措置

現在、一部の業種で認められている週44時間の特例措置について、見直しの必要性が議論されています。

• 特例対象事業場の8割が特例措置を使っていない現状を踏まえ、一般原則（週40時間）適用の方向で検討が進められています。

特例措置を利用している企業は、将来的な制度変更に備えた対応を検討する必要があるかもしれません。

労働時間からの解放の規制について

法定休日制度

法定休日については、以下の点が議論されています。

• 休日の特定義務化
• 4週4休制の廃止・改善
• 週1回の休日確保の必要性

企業としては、より厳格な休日管理が求められる可能性があり、シフト管理の見直しなどが必要になるかもしれません。

勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度については、さらなる普及促進に向けた議論が行われています。

• インターバルの時間は科学的知見に基づき11時間を基本とする方向性が示されています。
• 罰則付きの義務規定ではなく、労使の話し合いによる実現可能な取り組みの導入を広げる方向性が示されています。

企業としては、努力義務から一歩進んだ形での制度導入を検討する必要があるかもしれません。

年次有給休暇制度

年次有給休暇の取得促進に向けて、以下の点が議論されています。

• 計画的な完全消化の推進
• 時季指定の在り方の見直し
• 年次有給休暇の残日数の可視化

企業としては、より積極的な年次有給休暇の取得促進策の実施が求められる可能性があります。

休憩について

休憩制度については、以下の点が議論されています。

• 一斉付与原則の見直し
• 長時間労働時の追加休憩の必要性

企業としては、より柔軟な休憩付与が可能になる一方で、長時間労働時には追加の休憩確保が必要になる可能性があります。

割増賃金規制について

割増賃金の趣旨・目的

割増賃金規制の在り方について、以下の点が議論されています。

• 長時間労働抑制効果と労働者の長時間労働インセンティブのバランス
• 労働市場の変化を踏まえた割増賃金の趣旨・目的の再整理

企業としては、割増賃金に頼らない労働条件の設計や、より直接的な労働時間管理の必要性が高まる可能性があります。

副業・兼業の場合の割増賃金

副業・兼業を行う労働者の労働時間管理について、以下の点が議論されています。

• 健康確保のための労働時間通算の必要性
• 割増賃金に係る労働時間通算の見直し

企業としては、副業・兼業を認める際の労働時間管理や健康確保の仕組みづくりが求められる可能性があります。

まとめ

以上、労働基準関係法制研究会で議論されている主要なトピックについてまとめました。これらの議論は、今後の労働関係法令の改正に繋がる可能性があります。企業の経営者や人事担当者の皆様は、これらの動向を注視しつつ、自社の労務管理体制の見直しや、より良い働き方の実現に向けた取り組みを検討していく必要があるでしょう。