育児休業中に従業員が退職したら育児休業給付金はどうなる?

育児休業中の従業員に対して支給される「育児休業給付金」は、従業員の育児休業取得とその後の職場復帰を支援し、育児と仕事の両立を促進する重要な制度です。

しかし、実際の現場では「従業員が育休中に退職を予定している」「育休取得後に従業員から退職の申し出があった」といったケースも珍しくありません。このような場合、その従業員は育児休業給付金の支給対象となるかどうかが実務上の課題となります。

そこで今回は、育児休業給付金と退職の関係について、企業の人事担当者が押さえておくべきポイントを解説します。

目次

育児休業取得時点で退職を予定している場合

育児休業を取得する時点で、すでに従業員が退職を予定している場合はどうなるのでしょうか?例えば、妊娠・出産を機に退職を予定している従業員が、退職前に育児休業を取得し、育児休業給付金を申請しようとするケースです。

この点、育児休業給付金は、育児休業後に職場復帰することを前提とした制度です。

そのため、育児休業の取得時点で既に退職の予定がある場合には、これらの給付金は原則として支給されません。

また、本来は給付対象とならないにもかかわらず、不正な手段により育児休業給付金の申請をした場合、不正受給とみなされる可能性があります。(たとえ給付を受けていなかったとしても、「受けようとした」行為自体が不正受給と見なされる可能性があります。)

企業の人事担当者としては、こうしたリスクがあることを従業員に正しく説明し、制度の趣旨やルールを理解した上で適切に対応しましょう。

育児休業の取得後に退職が決まった場合

育児休業の開始時点では職場復帰を予定していたものの、育休中に家庭の事情や本人の意向の変化などにより、途中で退職を決断するケースもあります。

このような場合、すでに育児休業給付金の受給資格確認が完了していれば、その後に退職が決まったとしても、退職日までの期間は育児休業給付金の支給対象となります。これは、育児休業給付制度の前提である「円滑な職場復帰の促進」という趣旨に反しないとされるためです。

なお、育児休業給付金の支給対象期間中の退職については、退職日までが支給対象です。以前は、退職日を含む支給単位期間のひとつ前の期間までが支給対象とされていましたが、制度改正により、2025年4月以降の退職については退職日までが支給対象とされています。

実務上の注意点と対応

人事担当者としては、育児休業の申出時に、従業員に職場復帰の意思があるかどうか確認しておくことが重要です。「職場復帰を前提として育児休業を取得する」という従業員の意思を会社側が確認しておくことで、不正受給のリスクを回避し、育児休業制度の適正な運用につながります。

また、2025年4月(令和7年)からの制度改正により、退職日まで育児休業給付金の支給対象となることも、従業員にあらかじめ説明しておくことで、従業員の誤解やトラブルを未然に防ぐことにつながります。

まとめ

育児休業給付金は、職場復帰を前提とした制度です。そのため、育休の取得時点で既に退職が決まっている場合には、これらの給付金は支給対象外となります。

一方で、育休開始後に退職が決まった場合には、退職日までの期間は支給対象となります。これは、制度の趣旨に反しない取扱いとされています。また、2025年4月(令和7年4月)からは、支給対象期間の考え方が変更されており、退職日までが給付対象となります。

育児休業を取得する従業員が増加する中で、育児休業給付に関する取り扱いは企業の人事実務においてますます重要なテーマとなっています。最新の制度内容を正しく理解し、適切な対応を行うことが求められます。

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