会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)上、会社分割に伴う会社から労働者・労働組合への通知や、労働者による異議申出については、原則として書面による手続きが求められています。こうした手続きが書面によるものとされている背景には、労働者一人一人に確実に通知を到達させる必要があることに加え、事後に紛争が生じることにより、労働者の地位が不安定になることを防止する必要があるためです。
現在、厚生労働省の労働政策審議会では、これらの通知書及び意義申出書の電子化の検討が進められています。
この制度については、令和2年頃から検討事項として上がっていましたが、労働者保護の観点や本人確認、労働者によって電子メール等を利用していない場合があることなど、さまざまな課題を整理する必要があるとして、具体的な制度改正までには至っていませんでした。
一方で、令和7年3月の部会においては、書面による手続きには紛失リスクがあることや、電子化によって手続きを円滑に進めることで、その分労働者との協議時間を確保できるのではないか、といった意見も出されており、改めて電子化について検討する必要性が指摘されています。
今回、労働政策審議会へ正式に議題として挙げられたことにより、今後、実際の制度改正につながる可能性が、これまで以上に高まったと考えられます。電子化が実現した場合、これまで書面で行っていた通知や異議申出に関する事務負担の軽減や、書面の紛失リスクの低減が期待できます。
一方で、電子化を実施するにあたり、「確実に通知が到達したことをどのように確認、証明するのか」「電子的な方法による通知について、労働者の同意を必要とするのか」などの点について、今後さらに検討する必要があります。
また、昨今では企業のシステムへの不正アクセスや情報漏洩なども多発していることから、労働者の個人情報を含む通知データをどのように管理・保存するのかといった、情報セキュリティの観点についても、重要な論点になると考えられます。
令和8年10月の審議会では、相手方への確実な到達を確保した上で通知の電子化を可能とすることや、使用者と過半数労働組合等が通知方法を定める仕組み、労働者が別の方法を希望した場合の対応について議論されました。今後、電子化の具体的な方法や労働者保護のあり方について、どのような制度設計が示されるのか、引き続き注目されます。
参考
・通知書・異議申出書の様式例|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137340.html
・雇用・人づくりワーキンググループ提出資料|内閣府(令和2年11月18日)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/koyou/20201118/201118koyou02.pdf
・規制改革・行政改革ホットライン検討要請項目の現状と対応策|内閣府
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/hotline/siryou2/k_siryou2_r3.pdf
・組織再編に伴う労働者関係の調整に関する部会議事録|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57486.html
・資料No.1 労働契約承継法における労働者等への通知等の電子化について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76683.html

